宇宙関係者が一度は妄想する『人工流れ星』という夢
薮崎 人工的に流れ星を作り出す仕組みについて、まずはお教えください。
岡島 人工衛星を使って、特殊な素材の流星源を衛星軌道上から所定の方向に放出します。するとその流星源が大気圏に突入する際に燃えて光を放つので、地上からは流れ星として見えるのです。2018年度中に人工衛星初号機を打ち上げ、2019年には広島での人工流れ星を使ったイベント実施を目指しています。
薮崎 実現への難易度はどれくらいなのでしょうか。
岡島 実は、アイデア自体は全然珍しくないのです。いきなり『人工流れ星』と聞くと、突拍子もないことに挑戦していると思われるのですが、天文学や宇宙科学をやっている方だったら『あ、それ考えたことある!』とおっしゃるのではないでしょうか。私は、大学2、3年生の時に、しし座流星群を同級生と見て『作れるんじゃないか』という話をしたことがきっかけでした。
また一度会社を作ったことがあるというのも大きいのではないでしょうか。マネタイズする方法が思いつかないし、お金もないからやらなかった、という話は聞きますね。
ゴールドマン・サックスから、人工流れ星の研究へ
薮崎 岡島さんが人工流れ星に取り組み始めたのは2011年からだと思いますが、それまでの経緯をお教えください。
岡島 大学から天文学を研究していましたが、一度大学4年生の時に、サイエンスとエンタメを融合させたリヴィールラボラトリという会社をつくりました。その後ドクターまで進んで卒業して、ゴールドマン・サックスの戦略投資部で働き始めました。ホテルやゴルフ場の買収などをやっていた部署なのですが、リーマンショックで規制が入ってしまって、部署縮小になってしまいました。それをきっかけにして起業をしたのです。
実は、ゴールドマン・サックス時代から、周りには将来人工流れ星に取り組みたいと話していました。私がいた部署は仲が良くて年に1、2回集まるのですが、その時に進捗をアップデートしていたのです。そうしたら上司だった方に出資していただけたりして、今事業を進めることが出来ています。
薮崎 ゴールドマン・サックス退職後、いきなりALEを立ち上げたのですか。
岡島 いえ、新興国進出のビジネスコンサルティングをやる会社に参加しました。東南アジアやアフリカ、インド、中東、チリなどいろいろでしたが、手足になって地を這うような案件を行っていました。その後の2011年にALEを立ち上げたのですが、研究開発自体は2009年から細々と始めていたのです。
例えば、大学の先生に『一緒にこういうこと出来ないですか』というような話を持って行って相談したり、学生さんの卒業研究にしてもらって、流れ星はどうやったら発生出来るかとか、物質がどのくらい熱くなるか、ちゃんと燃えきるかみたいなことを計算してシミュレーションしていました。
人工流れ星実現までのカウントダウンは始まっている
薮崎 2018年度に初号機打ち上げですが、これまではどのようにして進めていったのでしょうか。
岡島 2009年頃から、首都大学東京の佐原宏典教授に相談をしたり、そこの学生さんも手伝ってもらったりして細々と始めました。大学と一緒に、JAXAの設備を使用した実験を行ったりもしていました。JAXAには、小惑星探査機『はやぶさ』のカプセルが再突入する状況を模擬できる設備があるのです。それで、燃えるかどうかや、どのくらい明るいかというのをカメラで撮影して確認していました。
薮崎 JAXAの設備は民間でも使用することが出来るのでしょうか。
岡島 これまでは、ALEと共同研究している大学がJAXAの設備を借りて実験していました。民間が借りられる仕組みもあるので、今後はALEが直接借りて実験を行うことも検討しています。
大学の先生方や政府機関との連携を密に取りながら進めています。全体システムや軌道計算は佐原宏典教授、衛星軌道や流星源は日本大学の阿部新助教授、衛星バス部は東北大学の桒原聡文教授、衛星ミッション部は神奈川工科大学の渡部武夫教授と一緒に取り組んでいます。
薮崎 どのように開発を進めているのでしょうか。
岡島 技術開発の柱としては、流星源の開発と衛星側の装置(放出装置と供給装置)の開発がメインとなります。
本記事は提携サイト『異端会議』(http://itankaigi.com/)の一部転載です。
本記事の続きはこちらの「異端会議」のページをぜひご覧ください。