「従来の延長線上」にある今のビジネスを、いつまで続けることができるのか?
国内市場の縮小や、グローバルレベルでの競争が高まる中で、従来の延長線上での経営や事業展開に危機感を抱いている方も多いのではないかと思います。社会状況や自然環境の変化を予測し、将来市場を見通した上で、これまでにないビジネスの選択肢を準備しておくことは、企業の成長に欠かせません。
しかし、重要性を認識していても、実行に移すことは困難です。私たちは、既存の製品を「より軽く」「より燃費を良く」していこうといった、従来のスペックとの比較で生まれる指標から一旦離れる必要があります。しかし、その指標から離れた途端、次にどこに軸を置いたらよいのか、迷ってしまうのではないでしょうか。
「従来の延長」とは別の軸に立った指標を打ち出すには、何を足掛かりに考えればよいのか。ここで、登場するのがSDGsです。不透明で不確実な将来を見据え、この新たな選択肢を準備するために、SDGsは一つの有効な指標となり得るのです。
なぜなら、SDGsが国際社会の総意によって設立され、2030年に向けた社会的ニーズを示しているからです。ある調査結果によると、SDGsは12兆ドルのビジネスチャンスをもたらすと言われています(*注1)。“約束された未来の市場機会”がそこにあるのです。
SDGsを自社の次なる選択肢のためのイノベーションのドライバー(駆動装置)として活用するためには、以下2点が必要です。
- SDGsに対する正しい理解を深め、生きたリテラシーを獲得すること
- SDGsを実践に落とし込むスキルを獲得すること
そして、この2点に通じる注目すべきひとつの手法に、「バックキャスティング(backcasting)」思考というものがあります。この手法は、「未来」を起点として、そこから逆算して「今」何をすべきかを考えることです。これと対をなすのが、「フォアキャスティング(forecasting)」思考で、この手法は、「今」を起点とする思考です。
従来のビジネス、製品やサービスを起点に考え始めると、どうしても過去の成功体験や従来の考え方や手法が抜け切れず、従来の延長線で考えてしまいます。その結果、将来の選択肢は狭くなってしまい、他社と有意差をつけるだけの大きな飛躍は望めません。
では、「バックキャスティング」の詳細を見ていきましょう。
*注1:Business & Sustainable Development Comissionによる調査結果より