エヌビディア山田氏が語る「AIと医師の共存」──“誤差を最小化するアルゴリズム”が鍵
主催であるLINK-Jは、ライフサイエンス領域における分野を超えた人的および技術交流を促進し、シーズやアイデアの事業化を支援している。そのサポーターの交流の場として開催されており、12回を迎えた「ネットワーキング・ナイト」では「ドクターとAI」をテーマに最先端の事例が紹介された。
開会挨拶で登壇した株式会社インディージャパンの津田真吾氏は、「様々な技術が登場したことでAIの信頼性が高まり、手頃に活用できる時代となった。センシティブな領域であった医療でも、斬新で効果的な活用が続々と報告されている。ぜひ、そうした情報や知見を共有し、それぞれの取り組みに役立ててほしい」とネットワーキング・ナイトの目的について語った。
1人目の発表者は、エヌビディア合同会社で医療やライフサイエンス領域に向けた事業開発とスタートアップ企業との連携を担当する山田泰永氏。山田氏は「医師と共存するAI」と題し、医療現場でのAI活用の可能性について語った。
グラフィックスにおける高速分析・表示技術力を誇るエヌビディアでは、グラフィックスの他にも大量データ処理を手がけてきた。10年ほど前からスーパーコンピュータの分野で急成長し、とりわけ近年ではビッグデータ分析・活用の面で注目を集めている。自動運転などの組み込みAIにも展開し、エヌビディアが開発したGPU(グラフィックボード)は医療分野でもCTの立体再構成や超音波機器など多くの医療機器に活用されている。
こうした医療で使われる画像認識および機械学習の仕組みとはどのようになっているのか。山田氏は次のように解説した。
たとえば、肺がんを見つけるには、健常または肺がんの画像から特徴を抽出して、対象者の画像と適合するかしないかを判断する。従来は比較するための特徴は“決め打ち”で、何を特徴とすべきか人間が考えて設定する必要があったので、なかなか性能を上げることが難しかった。対してディープラーニングは大量のデータ解析から自動的に特徴を抽出するだけでなく、『何をもって特徴とすべきか』というルールまで導き出せるようになる。
つまり、判別のための特徴抽出を後天的に導き出し、それに基づいて判別ができるようになるというわけだ。誤差が小さいほど優秀な判別ができるということであり、設定した誤差を最小化すればするほど優れたアルゴリズムということになる。
山田氏はこうした機械学習の可能性について、「判別は単なる“最適化”のアルゴリズムの結果であり、タスクに応じて最適な分類パターンを後天的にデータに応じて導き出す仕組みということになる。そのため、事前に人間が明文化できなかった特徴を、データ解析によって導き出せるようになる可能性がある。そのためにはデータが質量ともに必要となり、多量のデータを分析できる能力が求められる」と語った。
こうした画像認識と機械学習によるソリューションは、あらゆるものへと応用が期待される。種類としては「CNN(Convolution Neural Network)」なら画像認識、「RNN(Recurrent Neural Network)」なら時系列に活用され、いずれもランダムにはじめて誤差を最小化していくことで90%以上の精度へと高めることができる。CNNの活用としては、画像の中に何が写っているのか「一般物体検出」などが紹介された。それを応用すれば、交通量調査や不審者検出などに使えるが、医療分野でいえばポリープの検出なども容易にでき、急変する前兆をつかむことができるだろう。
「どこに適用させるか、アイデア次第で可能性は広がる。どこの分野にどのように学習させるかで、どのような場所でもいかようにも活用することができる」と山田氏は強調し、たんぱく質の異常の検出やゲノム分析など複数の事例が紹介された。そして、こうしたAI活用の課題として「AIの活用戦略立てができる人材の不足」「データの量と質を確保するための制度や仕組みづくり」「AIに対する先行投資の判断」などについて語った。