キャップジェミニのデジタル・トランスフォーメーション・インスティテュートは、新しくリリースしたレポートで、「人工知能(AI)は消費者にとってもはや無縁のものではない。消費者のほぼ3/4(73%)はAIを介したインタラクション(対話・やり取り)をすでに経験し、そのうち69%はそのやり取りに満足している」ことを明らかにした。
この新しいレポート『The Secret to Winning Customers' Hearts with Artificial Intelligence: Add Human Intelligence(人工知能で消費者の心を勝ち取る秘訣 - ヒューマンインテリジェンスの追加がカギ)』によると、消費者の55%はAIと人間の組み合わせによるやり取りを好み、64%はAIにもっと人間的になって欲しいと思っているという。
このような人間に近い特性は、有意義な「のれん」を形成し、ほぼ半数(48%)の消費者の支出傾向を高める。しかしながら、多くの企業は、AI技術をカスタマーエクスペリエンス(CX)に適用する際に、実装コストや期待する投資収益率(ROI)のような従来の指標に重点を置いて、消費者のペインポイント(悩みの種)や嗜好を考慮できずにいる。
10カ国、500社以上の企業と10,000名の消費者を対象に調査を行った今回のレポートでは、AIを意識する消費者の63%は、24時間365日いつでも使用可能であること、対話・やり取りをより巧みにコントロールすることを理由として、AIに好意的であることが明らかになった。また、消費者は、さまざまなデジタルなアルターエゴ(別人格)の可能性を受け入れつつあるという。回答者の48%が「電子的なパーソナルアシスタントに仕事や作業を任せられる機会」を「エキサイティング」ととらえ、また46%が「クオリティ・オブ・ライフを高める」と確信しているとする。
消費者が望むのは「人間に近い」AI - 「人間のような見た目」は欲していない
今回の調査では、消費者の62%が、人間に近い知性を違和感なく受け入れて満足している。また、消費者の49%は、AIによる対話・やり取りがもっと人間に近いものになれば、企業に対する帰属性・親和性がもっと高まるだろうと答えている。
この嗜好は世代を超越しており、18歳から55歳以上までのすべての年齢層において、消費者は人間とAIが混在する形での対話・やり取りを好むという結果が出た。
また、顧客はAIが人間に近い声をもち(62%)、人間の感情を理解する能力をもつ(57%)ことを待ち望んでいるが、実際の見た目については「気味が悪い」と感じるという結果に。顧客の52%は、AIが人間のような見た目をもつことに違和感を感じ、対話・やり取りがしづらいと答えている。また、消費者の66%が、企業がAIを介する対話・やり取りを可能にしている際には、それを認識したいと回答している。
企業はAIを実装する際にカスタマーエクスペリエンスを優先し損なう
企業は、消費者がAIを活用したカスタマーエクスペリエンスを希求しているにもかかわらず、顧客の嗜好よりも従来の指標に重きを置いている。今回のレポートによれば、調査対象企業の62%がコストを、59%がROI(利益収益率)をAI技術の実装における最も重要な要因として優先している。一方で、「顧客の既知のペインポイントの解消」を上げたのはわずか7%、カスタマーエクスペリエンスへの影響をAI対応のユースケース実装における重要要因として挙げたのはわずが7%にとどまった。
消費者側の結果では、買い物客の38%は良いAI対応経験に従って購入を増やし、1/4は支出額が10%アップしていることが判明した。さらに、AIを使用した対話・やり取りは、企業に対するロイヤルティと信頼を高めるための一因にもなっている。