その顧客価値は本当に価値なのか?
セッション冒頭、「新しい顧客価値を作ると言うのは簡単ですが、果たして本当に作れるのでしょうか」と問いかけたのは、博報堂のHMSC局プロセスコンサルティング部 部長の荒井友久氏。経営コンサルティングファームで製造業などを担当してきた荒井氏は、ものづくり業の課題を身にしみて理解している。
事業変革・事業開発の領域含め、あらゆる場面で語られる「顧客価値」。一般的な顧客価値は、分母を生活者にかかるコスト、分子を生活者が得られるベネフィットとして表現することができる。コストとは、経済的コスト以外にも時間的コストなども含まれる。生活者にとって簡単か、便利か?の世界だ。
しかし、この領域は破壊的イノベーションを起こしたディスラプターと呼ばれる企業により、既存事業は脅かされている。「彼らと戦うのは、事業を営んでいることによる様々な制約もあり、限界が出てくる。」と荒井氏は指摘。そこで、分子の部分を伸ばすかが重要になる。これが価値創造である。しかし、ここでも「新しい価値は、本当に新しく、価値あるものか?」という問いが続く。
自分のお気に入り商品や情報が見つかる。好みにカスタマイズができる、店舗でもネットでも購入できる──。一見、生活者にとって価値と思えるもの。これらは、あくまでも生活者発想“風”になりやすい価値だと荒井氏は語る。
イチ生活者として考えたとき、本当に、考えている価値は嬉しいことでしょうか。なんならお金を払ってでもやりたいと思えることでしょうか。それに応える価値を見つけるのはたやすいことではありません。私たちは、それを事業の生活者価値と呼んでいます。デジタル時代の成長を考える上で、これを見つけることがもっとも重要なのではないでしょうか。(荒井氏)