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エコ・コウハウジング、エコビレッジの可能性

Vol.3

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エコビレッジがエコロジカル・フットプリント「地球0.8個分」を達成

 エコ・コウハウジングの延長線上には「エコビレッジ」がある。サステナブルな建築や循環型経済を実現しようとする一定のエリアとコミュニティを指す言葉だ。世界のエコビレッジを結ぶグローバル・エコビレッジ・ネットワーク(GEN)(※日本にも支部がある)の定義では「環境再生をめざした全員参加型の活動を意識して意図的にデザインされた、あるいは、もとからあったコミュニティ」となっている。

 エコビレッジの規模はさまざまであり、数千人が生活するエリアもいくつかあるが、多くは100人以下である。運営は、気の合う住人同士などでいくつかのグループに分かれて自主的に行われることが多い。伝統的な村落のように一部の人間だけが行政を司り、トップダウンで統治するのではない。コミュニティのメンバー全員が平等に自治に参加する完全な「横社会」となっているケースがほとんどだ。

 英国ウェールズ政府は、環境再生や持続可能性に配慮した土地開発(ローインパクトデベロップメント)を定めた「ワンプラネット開発」方針を打ち出している。その方針に沿ってウェールズではエコビレッジの実現と普及をめざす「ラマス・プロジェクト」が進行中だ。そしてその中核であり、全ウェールズのモデルケースとしても期待されている小規模なエコビレッジが「ティア・イ・ガフル(Tir y Gafel)」である。

 ティア・イ・ガフルには2016年末までに9世帯が入居している。農耕を中心に「自然環境への影響を極力抑えた暮らし」を実践しており、生活に必要なものの大半は住人たち自身の手で作られている。

 ラマス・プロジェクトは2015年の年間リポートで、同プロジェクトのエコビレッジが、エコロジカル・フットプリント地球1個分以下の暮らしを達成したと発表した(※エコロジカル・フットプリントは人間の活動が環境に与える負荷を示す指標。もし全人類がその地域の人たちと同じ環境負荷を与えたら地球がいくつ必要になるか、と考え「地球○個分」と表現する。たとえば全人類が日本人と同じ生活をしたら「地球2.3個分」が必要になるとされている)。2010年には「地球1.36個分」だったが、5年間で「0.8個分」まで縮小したのである。これは、全ウェールズの平均値の3分の1だという。

 あらゆるエコ・コウハウジングやエコビレッジなどの取り組みに共通するコンセプトは「共有」「環境意識の向上」「住人の参加」。これらを実践するには、小規模なコミュニティが最適だ。“小ささ”が必要なのである。

(翻訳協力:株式会社トランネット)


SERENDIP編集部コメント

 日本国内でも、まだ多くはないが、各地でエコビレッジが運営されている。そうした実践の他に、普段の生活の中で、時に「小ささ」「シンプルさ」「シェア」などの価値観を意識するだけでも、環境問題解決へと小さな一歩を踏み出せるのではないだろうか。まずは、この世界の潮流に関心を持ち、価値観を学ぶところから始めてみてはどうだろう。

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『Small is Necessary: Shared Living on a Shared Planet』

Anitra Nelson 著 | Pluto Press | 320p

書影目次
1.少ないほど豊かに
2.かつて人は小さく暮らしていた
3.都会でのアパート暮らし
4.アパートでの家庭生活とアフォーダビリティ
5.シェアハウスからエコ・コウハウジングまで
6.エコビレッジ
7.「私たちと一緒に踊ってくれますか?」
8.「市場へ、市場へ」
9.草の根の持続可能性、社会性、そして運営管理
10.「小ささ」は必要であり、シェアすることで実現可能に

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