本書では、エコ・コウハウジング、エコビレッジをはじめとする「居住」や「暮らし」に関わるエコロジーの新しい潮流を、多数の具体事例とともに紹介。資源の枯渇や気候変動、生物多様性の破壊などを防ぐには、小規模なコミュニティで住居や資源などを他者とシェア(共有)しながら暮らすライフスタイルが広がる必要があることを多角的に検証している。著者はオーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学アーバンリサーチセンター准教授。コミュニティを基盤としたサステナビリティ(持続可能性)、ハウジングなどを専門とする。
環境面から住居に求められるのは「小ささ」と「シェア」
欧州をはじめ、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどでも、都市部を中心に住宅の確保が困難な傾向が続いている。人口増により需要が高まり、住宅価格や賃料が高騰しているからだ。
世界人口は増加する一方だ。1800年に10億人程度だった地球上の人の数は、今では70億人を超えている。2030年には、さらに11億人増えると予想されている。人口増加に対応する、とくにグローバルノース(主に北半球に位置する先進国)における住宅建設は、資源を枯渇させ、大量の二酸化炭素を排出するだけでなく、森林伐採などにより動植物の生息環境にも甚大な影響を与えている。
これらの深刻な問題に対処するのに、多くの専門家が「より小さく、かつ他者とシェア(共有)するライフスタイル」を推奨している。大きい家ほど内包エネルギー(建設に伴うエネルギー消費)と運転エネルギー(使用に伴うエネルギー消費)の消費量の増加が著しい。また、熱エネルギー効率が悪く、CO2排出量が増える。
第二次大戦後以降、先進国を中心に核家族化が進み、一世帯の規模は縮小傾向にある。独身世帯や一人親世帯も増加している。しかし、少人数世帯は多人数世帯よりもエネルギー効率がよくない。少人数世帯が一戸建住宅で暮らすと、集合住宅よりエネルギー消費量が平均で17~26%増えるという研究結果もある。
そのため、「小さく、かつシェア(共有)することで環境に負荷をかけないサステナブル(持続可能)な居住形態」への関心が高まっている。