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エコ・コウハウジング、エコビレッジの可能性

Vol.3

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共同住宅でサステナビリティを実現する「エコ・コウハウジング」

 とくに注目されているのが(北欧発祥の)「コウハウジング」と呼ばれる居住形態だ。これは(マンションなどの)一般的な集合住宅とも、いわゆるシェアハウスとも異なる。

 シェアハウスとは、家族ではない複数の人々が賃借し同居する住宅を指す。典型的なシェアハウスは、いくつかの個室を持つ一軒家だ。住人はその個室と共同利用部分を借り、その分の家賃を分担する。共同で利用するのは台所やトイレ、風呂、リビングなどで、光熱費などは住人全員の頭割りで負担することが多い。共同生活については常識的な決まりごとがあるだけで、基本的にはコミュニティが形成されるというよりも、各々のプライベートな生活の集まりといった要素が強い。住人は短期滞在の学生や、一時的な仮住まいが必要な人などが多い。

 一方、コウハウジングでは、複数の人々あるいは複数世帯が同じ場所に居住し、コミュニティ主体の暮らし方をする。一戸建と集合住宅、どちらの形態もあるが、数人、数世帯からなる小規模なコミュニティなのが特徴だ。

 コウハウジングの住人は、プライバシーを維持しながら近隣住人との関わりを大切にし、互いに協力しあって生活する。共同生活のガバナンス(管理)は入居者全員が同じ立場で行う。共同利用の台所やダイニング、洗濯場、遊戯場、庭や菜園などが設けられていることが多く、さらに託児所があったり、「コモンミール」と呼ばれる合同食事会を週に何度か催したりするケースもある。行政からの補助などにより家賃や購入価格が低めに抑えられていることが多く、低所得層や一人親世帯などに人気だ。

 さらに「エコ・コウハウジング」という形態もある。地球環境の保全と持続可能性をより高めることを目標に開発された共同住宅や居住エリアである。たとえば建物自体に太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーを使用する設備や、雨水を貯水し、生活排水や飲料水に利用するシステム、廃棄物処理のシステムなどを備えていたりする。

 英国イングランドのノッティンガムシャー郡には「ホッカートン・ハウジング・プロジェクト(HHP)」というユニークなエコ・コウハウジングがある。1998年に建てられたHHPは、片側を土で覆ったアースシェルタリングと呼ばれる長屋タイプの共同住宅(※丘の片側の斜面をくり抜くように建てられている)と農場、共同スペースなどで構成されており、5世帯が暮らしている。

 HHPでは、入居者たちが対等な立場で建設時から意見を出し合い、コミュニティを築き上げてきた。エネルギー、水、食料は、ほぼ自給自足で賄う。機械を使わずに、建物の材料や構造に蓄熱などの工夫をすることで太陽光エネルギーを活用する「パッシブソーラー・システム」を採用。その他、風力タービンによる発電、雨水を飲料水や生活用水に利用するシステムなどが取り入れられている。住人たちは食料を得る農場(果樹園や畜産農場などを含む)での作業に1日あたり数時間の労働力を提供する。

 さらにHHPには研究施設としての役割もある。そのため研究者や学生、一般住民を対象とするエコツアーやワークショップなども行われている。

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エコビレッジがエコロジカル・フットプリント「地球0.8個分」を達成

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