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CVCの基礎と成功戦略

ヤフーの取り組みに学ぶ、CVC設立の事業会社にとってのシナジーとは──景気後退でも投資を止めるな!

第6回(最終回)

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 これまでCVC設立にあたっては、シナジーよりもキャピタルゲインの確保を重視して運用すべきという話をしてきました。しかし現実問題として、事業会社がCVCに、自社事業へのプラス効果を期待していることは間違いなく、CVCを企画・運営する際には、シナジーの説明は避けて通れません。そこで今回は、CVCと事業会社のシナジーについて述べてみたいと思います。  本稿では、筆者が前職ヤフー株式会社(以下、ヤフー)で目にした事例を、一般開示されている情報の範囲でご紹介しています。投資主体はヤフーであることが多いですが、CVCに置き換えても成立する内容なので、ご参考にしていただければ幸いです。

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事業会社で発生する「金銭的シナジー」とは

CVC

 そもそも事業会社の目線から見る、CVC設立によるシナジーとは具体的にどういうものでしょうか。それを考えるにあたり、まず金銭的シナジーとそれ以外のシナジーに分け、さらに金銭的なシナジーを、発生する場所により「自社事業」と「投資先事業」と整理します。

 自社事業で発生するシナジーは、自社事業の売上増や経費減につながる資本・業務提携が考えられ、提携内容の例としては、投資先の営業力を活用した営業協力や、投資先の運営するメディアを活用した送客などがあります。

 具体的な事例ですが、ヤフーが当時、オプトグループのクラシファイド(株式譲受日2017年12月26日にて、ヤフーの連結子会社化)に出資した際は、同社の営業力を活用して「Yahoo!不動産」等の掲載枠の販売を強化することをシナジーとしていました。自社で営業部隊をゼロから立ち上げる時間とコストを考えると、売上、経費ともに効果があったと推測されます(*1)。

 直接的な売上増、経費減だけではなく、サービス改善コストの削減や開発コストの削減等も自社事業の金銭的シナジーと考えることができます。

 事例ですが、ヤフーがアイスタイルに出資した際、同社から提供される化粧品クチコミ情報のデータ数を増加してもらうことで、「Yahoo! BEAUTY(ヤフービューティー)」のコンテンツが改善されることをシナジーとしていました。自社でクチコミを集めること比較すると、時間と費用面で効果が上がったことが推測されます(*2)。

 同様の事例として、ヤフーがCriteoに出資した際は、同社の持つリターゲティング広告技術を利用することにより、Yahoo! JAPANサイト内の広告商品の価値を向上させることをシナジーとしていました。自社でリターゲティングの技術を開発するよりも早期に運用を開始することができる上、開発コストが削減でき、結果として売上にも貢献していると推測されます(*3)。


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この記事の著者

戸祭 陽介(トマツリ ヨウスケ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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