事業会社で発生する「金銭的シナジー」とは
そもそも事業会社の目線から見る、CVC設立によるシナジーとは具体的にどういうものでしょうか。それを考えるにあたり、まず金銭的シナジーとそれ以外のシナジーに分け、さらに金銭的なシナジーを、発生する場所により「自社事業」と「投資先事業」と整理します。
自社事業で発生するシナジーは、自社事業の売上増や経費減につながる資本・業務提携が考えられ、提携内容の例としては、投資先の営業力を活用した営業協力や、投資先の運営するメディアを活用した送客などがあります。
具体的な事例ですが、ヤフーが当時、オプトグループのクラシファイド(株式譲受日2017年12月26日にて、ヤフーの連結子会社化)に出資した際は、同社の営業力を活用して「Yahoo!不動産」等の掲載枠の販売を強化することをシナジーとしていました。自社で営業部隊をゼロから立ち上げる時間とコストを考えると、売上、経費ともに効果があったと推測されます(*1)。
直接的な売上増、経費減だけではなく、サービス改善コストの削減や開発コストの削減等も自社事業の金銭的シナジーと考えることができます。
事例ですが、ヤフーがアイスタイルに出資した際、同社から提供される化粧品クチコミ情報のデータ数を増加してもらうことで、「Yahoo! BEAUTY(ヤフービューティー)」のコンテンツが改善されることをシナジーとしていました。自社でクチコミを集めること比較すると、時間と費用面で効果が上がったことが推測されます(*2)。
同様の事例として、ヤフーがCriteoに出資した際は、同社の持つリターゲティング広告技術を利用することにより、Yahoo! JAPANサイト内の広告商品の価値を向上させることをシナジーとしていました。自社でリターゲティングの技術を開発するよりも早期に運用を開始することができる上、開発コストが削減でき、結果として売上にも貢献していると推測されます(*3)。
- *1 オプトグループとヤフー、不動産関連事業で提携(2007/12/14 MarkeZine)
- *2「Yahoo!ビューティー」と「アットコスメ」がクチコミで協業(2007/2/14 アイスタイルプレスリリース)
- *3 Yahoo! JAPAN、Criteoのパートナーシップ、これまでと今後 [インタビュー](2017/3/24 Exchange Wire)