当レポートは、大手投資家がどのように魅力的なリスク調整後リターンを追求する方法を探ると同時に、投資ガバナンスを通じて新型コロナウイルス感染拡大の影響の軽減と対応に役立つ投資行動を取っているかについて調査している。新型コロナウイルスは、世界経済に対して過去100年間で最大級の影響を及ぼしており、すべての資産クラスにわたり流動性、市場のボラティリティ、バリュエーション調整に影響を与え、多くの資産クラスの予想リターンを大きく変化させている。また、名目金利と実質金利を押し下げ、原油価格を低下させるとともに、一部の政府や民間部門の支払能力に打撃を与えている。
また、当レポートはマーサーが世界経済フォーラム(WEF)と協働して数年にわたり続けている「Transformational Investment(変革的投資)」と関連しており、世界的なシステミック・リスクに係る投資行動やガバナンス慣行について調査している。世界的なシステム・リスクは、世界の経済や社会、そして地球が直面しているリスクであり、気候変動、安全な水の確保、地政学的安定、技術革新、人口動態の変化、ゼロまたはマイナスの長期金利を含む。加えて、WEFが最近発行した「Transformational Investment: Converting Global Systemic Risks into Sustainable Returns(変革的投資:世界的なシステミック・リスクを持続可能なリターンに変換)」と題するレポートは、非伝統的な投資リスクと投資機会の長期的な影響に投資家が対応するための新しい知見を提供している。
WEFとマーサーは、この協働調査を通じて、機関投資家に魅力的なリスク調整後リターンを追求する6段階のガバナンスおよび意思決定の枠組みを提供している。マーサーのレポートは、この枠組みがどのようにパンデミックに適用されるかを示している。枠組みは以下の6段階で構成される。
この枠組みによって、マーサーのレポートは機関投資家の目的として以下の2つを掲げている。
- システミック・リスクに対応するために策定されたガバナンス戦略について、新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした市場危機への対応に照らして評価すること。
- 景気回復を支え、魅力的なリスク調整後リターンを生み出すような、長期投資家による実践的な投資行動を検討すること。景気の回復と再浮上を支える投資は「変革的」とみなされる。