経営における「遠心力」と「求心力」を均衡させる、従業員の結束を促すパーパスの重要性
──まず、お二人の自己紹介をお願いします。
藤原健人氏(以下、敬称略):JT人事部の藤原です。12年ほど前にJTに入社し、人事を中心にキャリアを積んできました。経験した領域としては、採用や人材育成、人事制度設計や人事戦略などさまざまです。直近では、人事戦略を担当し、2023年に発表した新たなグループパーパス「心の豊かさを、もっと。」の策定にも携わっています。
藤井陽平氏(以下、敬称略):株式会社プレイドのSTUDIO ZEROに所属する藤井といいます。STUDIO ZEROは株式会社プレイド内の事業家集団で、ブランディング、新規事業立ち上げ、事業のグロース、組織変革の伴走支援を手がけています。顧客の事業を深掘りし、変革を起動する「勝ち筋のレバー」を引くのが私たちの役目です。そのなかで、私は主にブランディング支援を担当しており、JTのパーパス策定後の施策にも参画しています。
藤原さんとの関係は比較的長く、私がプレイドに入社する前からかれこれ9年ほどご一緒しています。藤原さんはJTにおける変革者的な存在で、いわゆる「攻めの人事」を積極的に手がけ、実践されている方という印象です。藤原さんに限らず、そうしたJTの人と組織への姿勢や意欲には、これまで多大な刺激を受けてきました。
藤原:もともとJTは人への投資に積極的な会社です。私自身も、いくら優れた戦略を描いてもそれを実行するのが人である以上、組織は人に注力せざるを得ないと考えています。新しいパーパスの策定にも人事部が関わっていますが、それはJTが人事と経営戦略を一体として考えている証拠といえるかもしれません。
──今回テーマとしているのが「パーパス策定の後にあるアクション」です。前提として、JTが新たなパーパスを策定した経緯をお聞かせいただけますか。
藤原:大きな要因としては、外部環境の急激な変化があります。日本に限らず、世界全体で市場環境が変化し、よりスピーディーな意思決定が求められる一方、グループ内では事業の多角化・グローバル化が進んでいました。JTはたばこ事業の会社であるというイメージが強いかもしれませんが、医薬品や加工食品などの事業も展開しており、グループのネットワークは130以上の国と地域に及びます。
外部環境の激しい変化に適応し、事業を拡大するなかでは、従業員それぞれが「なぜJTはグループでなければいけないのだろう」とか、「グループとして事業を行う意味はあるのだろうか」などの疑問を持つのは当然のことです。
事業が拡大して行く際に「遠心力」を働かせる必要がありますが、同時に従業員たちをつなぎ合わせ、組織を機能するように成立させる「求心力」が必要です。先般のパーパス策定には、急速に変化する外部環境のなかで結束力を高め、より的確かつスピーディーに意思決定できる体制を築くことで、長期にわたって価値提供を行うためにJTグループの存在意義を明確にする狙いがありました。