コロナ禍前から顕在化していた「ジョブ型」、コロナ禍後に勢いが増しつつある「ジョブ型」
コロナ禍前から、「ジョブ型」へのシフトは顕在化していた。テック系人材を始めとする即戦力人材の採用である。3~4年前から、人事コンサルティング案件では業種に関係なく、デジタルトランスフォーメーション(DX)に不可欠なテック人材のアトラクション(採用)やリテンション(引き留め)が大きなイシューとなっている。
中途採用であれ、新卒採用であれ、即戦力人材が重視するのは、「ジョブ」である。会社に所属する「就社」でもなく、職種につく「就職」でもない。自らの能力・スキルを発揮し、キャリアを積み上げるための「ジョブ」の内容、それがもたらすエクスペリエンス(経験)が重要なのである。
テック系人材の獲得が激化する中で、採用時に「ジョブ」を明示し、「ジョブ」により配置し、「ジョブ」に基づいた場や機会を提供し、評価・処遇する動きは顕在化していた。この動きは、昨今の「ジョブ型」へのシフトに合わせて、今後定着していきそうな流れである。
今年の3月からリモートワークが身近な働き方となり、4月に緊急事態宣言が出されたあたりからは、リモートワークが本格化した。軌を一にする形で、読者の多くは「ジョブ型」という表現をよく見聞きするようになったはずだ。
直接的な理由は、リモートワークによりフォーカスされ始めた仕事の管理方法である。リモートワークでは上司・部下間や、仕事上の関係者と同じ時間と空間を共有することが限定される。その結果として、仕事のアウトライン(範囲)やアウトプット(成果)を相互に認識しておく必要が一気に高まった。
そこで、にわかに注目され始めたのが「ジョブ型」である。コロナ禍前は、テック人材などの即戦力採用を中心に適用されていた「ジョブ型」の考え方が、コロナ禍によるリモートワークの急拡大により、多くの読者が身近に感じられるキーワードとなりつつあるのである。