今回の技術連携の一環として、IBC(Inter-Blockchain Communication、以下IBC)による取引を仲介する第三者に依存しないRelay方式を用いた、複数の異なるブロックチェーン間における価値移転の自動化に関する実証実験を実施した。
今回の実証実験では、Hyperledger Fabricで構築された「貿易プラットフォーム」と、Cosmos(Tendermint)で構築された「決済プラットフォーム」を用意し、下図のように、「貿易プラットフォーム上の貿易文書の移転」と「決済プラットフォーム上の資金の移転」のDvP決済を行った。
貿易業務において、サービス利用者である輸入者と輸出者の行う作業を、「HTLC方式」と「Relay方式を実装したCross Framework及びIBCモジュール」について比較すると、下図のようになる。
HTLC方式では、サービス利用者である輸入者・輸出者が作成した双方のトランザクションを、サービス利用者自身が確認・署名するため、取引中の煩雑な対応が必要になる。サービス利用者による確認・署名を、サービス運営者が代行し自動実行することも可能だが、秘密鍵の管理に対する制約が大きいため、サービス運営者にとって大きな負担となる。
一方、Datachainが開発を行うCross Framework及びIBCモジュールは「Relay方式」を実装しており、サービス利用者が管理者に秘密鍵を渡すことなく、取引の自動実行(取引中のサービス利用者の操作は不要)を行うことができる。また、HTLC方式ではサポートが難しい任意のデータの連携が発生するような複雑なスマートコントラクトも実装が可能となる。
これらの特性から、Cross Framework及びIBCモジュールを活用することで、貿易プラットフォームと決済プラットフォームをまたぐAtomic Swapの自動実行が実現でき、トリレンマ解決への見通しが立ったという。
今回の実証実験の結果を受けて、デジタル通貨を利用した効率的かつ実用性、利便性に優れた決済の可能性が確認できたことを踏まえ、両社は、以下のような領域への応用を検討している。
- トレードワルツが運営する貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」において貿易関連証券と資金の価値移転の実現
- NTTデータとSecuritize Japanが共同研究している証券プラットフォームにおけるDvP決済の実現
- 電力取引における、P2P電力や非化石証書に係る権利と資金の同時移転
- 保険領域における、診断データを管理するブロックチェーンと保険契約を管理するブロックチェーンの連携による保険金の自動支払の実現(デジタルアセットの交換だけでなく、任意のデータの連携も可能)