ESG(環境、社会、ガバナンス)ポリシーは、会社運営を規制する一連の基準であり、500 Startupsは投資分析、意思決定、ポートフォリオ管理のプロセスにESGポリシーを取り入れている。このレポートでは、投資家が積極的に投資している市場、地域、セクターでの活動を中断することなく、リスクを軽減し、価値創造の機会を見出すことができるアーリーステージの投資プロセスにおけるESG基準についても明らかにしている。
500 Startups では、スタートアップへの投資戦略においてスクリーニング・投資・モニタリングの三段階のあらゆる側面にESGを取り入れており、実行可能なESGフレームワークを構築している。その一環として、投資先企業に対して、労働者の権利やジェンダー平等から環境への配慮に至るまでESGに関するアンケート調査を実施している。主な調査結果は以下のとおり。
- スタートアップの大多数(80.4%)がESGを起業活動のさらなる機会とリスクの見極めの好機と捉えている
- スタートアップの65.9%がダイバーシティとインクルージョンの目標を設定している
- スタートアップの49.5%にはオーナーシップを持つ管理職に女性がいない
- スタートアップの59.1%が従業員や顧客、協業先企業の潜在的な安全・健康衛生リスクを管理するためにガイドラインを作成している
- 投資家にとって2021年度、最も人気のあるESGテーマは「人種問題」、「政府規制」、「気候変動」、「デジタル倫理」、「新興市場」である
スタートアップのESGに対する見解
アーリーステージのスタートアップは、その大多数(80.4%)がESG統合を起業活動の機会創出とリスク管理に有益と捉えている。つまり、ESG基準を監視し、具体的な目標を設定することこそが、企業とステークホルダーにとって最善の利益につながるという理解が、スタートアップ業界に広まっていることを示している。ESG統合は、企業の透明性や倫理性を高めて成長を促すだけでなく、潜在顧客や投資家、人材にとっても魅力的なものとなる。
2021年度のESGトレンドについて
パンデミックをはじめ、自然災害、政治的・社会的緊張の高まりなど2020年に危機が重なったことで、ESGポリシーが投資の意思決定において重要な要素となった。このような危機的状況下では、投資家にとって、投資対象の企業がESG計画によってリスクを軽減しているかを評価する傾向が見られた。2021年度、最も人気のあるESGテーマは次の5つに関連するテーマだという。
- 人種問題:投資家はすでに企業に対し、経営のあらゆるレベルで人種や性別の多様性に取り組み、伝統的な権力や不平等を打破する方法を検討するよう促している。具体的には、機会均等を重んじる雇用主であることや、企業文化においてダイバーシティとインクルージョンを確実に反映することなどが求められている。
- 政府規制:近年、投資に対する透明性がますます重視されている。新たな規制に備えて、ESGポリシーの定義や進捗状況のモニタリングを開始する企業が増えていくと予想される。
- 気候変動:政府は、環境リスクを軽減するため、脱炭素化社会を目指す動きを強めている。企業は、二酸化炭素の排出量を注視し、グリーンウォッシュ(偽、根拠のないのエコ表示)の罠にはまらずに、社会の信頼を維持するためのコンプライアンス遵守が強く求められている。
- デジタル倫理:消費者のプライバシーを確保し、誤った情報の拡散を防ぐためには、デジタル倫理が不可欠。世界的なパンデミック流行により仕事や教育がオンラインに移行したことで、デジタル格差が拡大した。企業は、従来以上にデジタルポリシーの策定と運用が求められている。
- 新興市場:2021年は、新興市場とそれに伴うリスク、ならびに消費者の期待や投資家の関心に合わせて、ESG基準が進化すると予想される。