1.『ビジネス・クリエーション!』
ビル・オーレット(著)/ダイヤモンド社・刊
私は、昨年、著者が来日して行った講演に参加し、直接話しを聞く会に恵まれた。我が国では、イノベーションはテクノロジーと関連してシリコンバレーだけが語られる印象が強いが、ニューヨークは全米で第二の起業やイノベーションの地域。
本書は、米国のみならず、世界を代表するマサチューセッツ工科大学(MIT)における、起業家養成の最新テキスト(教科書)である。
著者自身、起業家でありながら同大学で起業家養成のクラスを担当している。この本は、著者による起業家精神に関する研究の畢生のテキストであり、20年来の念願だったという。
本にはメディアラボ所長の伊藤穣一が序文をよせており、同学校出身者から毎年900ものスタートアップが誕生し、これまでに300万人の雇用を創出しているとのこと。
本書では、これまでの様々なイノベーション(スタートアップ)の著名書に負うところが大きいとしながらも、それらがどれも一長一短だったと述べる。それは、イノベーションが多様だからである。
しかも、これまでは一部の非凡な才能の持ち主やカリスマ性ある人だけが、アントレプレナーになりイノベーションを起こしていると思われている。そうではなく、マネジメントと同様に正しい手法に基づいて学習すれば、誰にでも身につけられる職能だと説くところに、本書の特長がある。そのためには共通言語化が必要で、6つのテーマ、24のステップによるロードマップを提示している。
本書では、起業家には2つのタイプがあるとしている。SME(中小企業)とIDE(イノベーション主導企業)だ。この本では、後者に焦点を当てて解説している。
そして、イノベーションとって何が重要かを語り、本書の位置づけを提示している。
発明を商業化する能力こそが、真のイノベーションには欠かせない。
本書で提供する手順と共通言語を、MITでは“規律ある起業家精神”と呼んでいます。起業は規律のない、混沌とした予想不可能なものだ、と言う人もいます。だからこそ、問題に取り組むためにフレームワークが重要であり、それを本書で示しました。
本書は、起業したばかりの人からそれを目指す人、企業内において新規事業、製開発を担当している人たちには気づきやヒント、得ることが多く詰め込まれている。
もちろん、そうした人たちをマネジメントする立場の人たちが読んでも参考となる。