ファッションアプリ「iQON」に女性200万人が『ハマるしかけ』
ニール・イヤールの『Hooked ハマるしかけ』は、インターネットビジネスを成功させるためのいくつかの方法を解説した本である。ユーザーの「習慣の力」を取り込み、サイトの価値をあげるためのUIやデザイン、コンテンツのヒントがたくさん詰まった本だ。金山氏は、ファッション系アプリの「iQON(アイコン)」のビジネスをグロースさせる中で、この本に書かれたフック・モデルに出会い、「これはヤバい」と感じたという。 Webのサービスもビジネスを成功させるためのキモとなる「ハマらせる」ポイントが、はっきりと書かれていたからだ。そして金山氏は翻訳チームをつくり自ら翻訳を手がけ、この本の手法のビジネスへの導入を徹底した。
まず僕達のサービスiQONは、一言で言うと、女性のファッションSNSアプリになります。ユーザー同士が共有し、コンテンツをアップロードし、ユーザー同士がコミュニケーションを図ったりするようなサービスです。ファッション雑誌のような画像を、ユーザーがアプリ上で組み合わせて投稿することが出来ます。だいたい今、1日当たり少なくとも2000枚の画像が投稿されていて、ファッション雑誌がだいたい1冊400ページぐらいですから、ちょっと大げさに言いますと、iQONでは、1日にファッション誌が5冊分の情報が生まれている計算になります。そういったイメージを持っていただければと思います。
iQONの一番の特長は、写真などのイメージからワンタップで購入までつなぐことだ。iQONのアプリでは立ち上げた瞬間に、フォローしているユーザーやそのときの人気の商品の一覧が並ぶ。これを「雑誌をめくる感覚」でひたすらスクロールしていく。このユーザー経験が、最も重要となる。
これまでのファッション誌は、いいなと思っても買えませんでした。雑誌で見つけた服を、Googleで検索したり、そのページを切り取ってお店に行ったりしなければいけませんでした。 ファッションの分野では、発見から購買まで、まったくイノベーションが起きなかった。われわれのサービスは、そこを一気に効率化したかったのです。
その段階では購入が発生しなくても、ブックマークをしたりLikeのボタンを押したりすことで、ユーザーの関心の情報が蓄積される。そして、在庫がなくなりそうな瞬間や、値下げキャンペーンがはじまった時に、ユーザーにプッシュ通知を送る。常に巡回し、適切なタイミングでユーザーに有益な情報をプッシュすることで、買い逃がしを防ぐことがポイントだという。
もうひとつのポイントは、ユーザーが画像を自分の好みに応じて並べていく機能だ。
iQONはサービス開始から順調に伸び続け、ユーザー数は200万人を超えたという。アプリはAppleとGoogleの両方からベストアプリの賞をもらった。プラットフォーマーからの高い評価は、ひとえに「エンジニアリングの力」であると金山氏はいう。
われわれVASILYという会社は、社員のうちの半分以上がデザイナーかエンジニアです。実はRuby創始者の、まつもとゆきひろさんも、技術アドバイザーとして、弊社の技術陣とディスカッションしたり指導いただいています。ファッションアプリで、スマートフォンでSNSというと、正直ちょっと、言葉は悪いけどチャラいじゃないですか。僕もこんな見た目ですし(笑)、結構チャラく見られる。でも、われわれとしては、ファッションの会社というより、完全にインターネットの会社だと思っています。ファッションの分野では、まだインターネットによるイノベーションが起きていない。僕たちはエンジニアリングとデザインで、この分野でイノベーションを起こしていきたいと思っています。