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『NETFLIX 戦略と流儀』 “ローカルコンテンツ”で世界中を魅了するNETFLIXは日本の敵か?

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 1997年にオンラインのDVDレンタルサービス事業で創業し、現在ではOTTサービス(Over the Top media Service)事業を中心にコンテンツ企業の覇者的地位を確立しているNETFLIX(ネットフリックス)。190以上の国と地域で、総有料会員数2億人強のシェアを誇っている。今回は、そんなネットフリックスと同社が生み出すコンテンツの根底に存在する戦略と、日本のコンテンツ産業が今後どのようにして海外の巨大動画配信プラットフォーマーと向き合っていくべきかを、『NETFLIX 戦略と流儀』(長谷川 朋子 著/中公新書ラクレ)の内容の一部を紹介しながら考察する。

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“地域発”で世界を巻き込む「ハイパーローカル戦略」の強さ

 まず、本書はネットフリックスの戦略について、3つの特色を挙げている。

ネットファースト展開

 同社は、1話数億円規模のドラマをネットファーストで展開する。“権利”が密接に関わるコンテンツビジネスにおいて、映画業界が長年死守してきた「ウインドウ戦略(劇場公開から配信までの権利運用の流れ)」を大胆に壊した展開手法にこだわっているのである。

ユーザー第一主義

 ネットフリックスには、数々のオリジナル作品がある。単に映像作品を並べるだけでなく、有望なクリエイターを積極的に登用し、独自コンテンツを売りにすることで、一般ユーザーから批評家までにわたる幅広い層からの支持を得たことが2つ目の特色だという。

ローカル発グローバル

 世界各地に散らばる作り手たちをすくい上げ、多言語、多文化に触れることができるコンテンツ群を増やしていったことが、3つ目の特色だという。日本発の例では、『全裸監督』のヒットなどがこの特色に当てはまると述べられている。

 これら3つの特色は、ネットフリックスがトップ企業へと昇りつめるにあたり、世界的に展開してきた戦略について言及したものである。では、日本での展開はどのような様相を見せているのか。

 我が国では、ネットフリックスの他にもアマゾンやディズニープラス、HuluにAbema TV、さらにはU-NEXTなど、多くの動画配信プラットフォームが顧客を取り合う乱立状態となっている。その中で、2020年時点ではアマゾンとネットフリックスが市場全体の39%を占めており、いわゆる二強の状態だ。

 本書によれば、日本はスマートフォンなどが普及しているにも関わらず、未だ放送局などの伝統的なテレビ・ビデオがメディアを支配しており、レガシーなローカルプレイヤーが比較的勢力を保てているユニークな市場であるという。しかし、ネットフリックスの“ハイパーローカル戦略”に今後も太刀打ちできるだろうか。

 ここでいうハイパーローカル戦略とは、「現地の出演者が現地語で語る現地ならではのストーリー」を作るということ。ローカルの視聴者は、自国のローカルコンテンツをより好む傾向があるからだ。著者は、「ローカルの視聴者を納得させることを前提に、全世界同時配信を可能にした環境も活かした上で、ハイパーローカルコンテンツを提供するのがネットフリックスというプラットフォームの強みである」と述べている。

 日本人から当たり前に好まれるコンテンツを世界同時配信で出し、ついでに日本向けコンテンツに興味を持った海外ユーザーも巻き込める環境が当たり前に備わっている。それが、ネットフリックスが2億人のファンを獲得している理由なのだという。

 たとえば、最近は韓国発のドラマ『イカゲーム』が世界中で人気となっているが、これもハイパーローカル戦略の上に大成功を収めた作品の1つといえるかもしれない。

 しかし、これではネットフリックスが、これまで地域に根付いていたローカルコンテンツやコンテンツ企業を駆逐してしまい、結果的にローカルコンテンツを衰退させてしまうのではないか。本書を読み進めていくと、どうやら一概にそうと言い切ることは難しそうだ。

 次項では、日本におけるアニメ(ジャパニメーション)戦略の例を紹介し、その理由を解説する。

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この記事の著者

名須川 楓太(Biz/Zine編集部)(ナスカワ フウタ)

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