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ローカリゼーション × 異文化理解

ローカリゼーションは、イノベーションに必要な“異文化理解”

第1回

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 「ローカリゼーション」という言葉をほとんどのビジネスパーソンが知っている。そして、このローカリゼーションが海外市場とビジネスをする際に、とても大切であることも分かっている。しかしながら、ローカリゼーションが”積極的なビジネス戦略”のなかで、どういう位置づけにあるのかを的確に説明できる人は少ない。この連載では、こうした現状に対して問題提起を行っていきたい。

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なぜ今、ローカリゼーションが必要なのか?

 ローカリゼーションマップという活動をスタートしてからちょうど5年になる。

 「ローカライズ」とは商品の仕様やメッセージを市場に適合させることだ。市場が要求する言葉や色・カタチあるいは法規に合わせる。そのための手法をリサーチする、実際の運用の手助けをする。ローカリゼーションマップは、これらを目的にしている。

 また別の目的や副次的な効果もある。

 ローカライズにより生まれた商品やサービスをみれば、該当市場の文化的特徴や傾向が分かる。したがって、「ローカライズされた商品は異なった文化の市場にアプローチする際の記号」としても役立つのだ。

安西 洋之安西 洋之 氏 モバイルクルーズ株式会社代表取締役。
上智大学文学部仏文科卒業後、いすゞ自動車入社。欧州自動車メーカーへのエンジンなどのOEM供給ビジネスを担当後、独立。1990年よりミラノと東京を拠点としたビジネスプランナーとして欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画している。国際交渉のシナリオ立案とデザイン企画を得意としている。また、海外市場攻略に役立つ異文化理解アプローチ「ローカリゼーションマップ」を考案し、執筆、講演、ワークショップ等の活動を行っている。

 私がなぜ、この活動を始めたのかを説明しようと思う。

 そのきっかけは、私自身の個人的なビジネス経験に基づいている。2000年代前半から電子デバイスのユーザビリティや欧州向けローカリゼーションのプロジェクトを手掛けてきた。そのために日本の自動車や電機メーカーとお付き合いするなかで、一つのことに気づいた。

 商品企画やデザインの担当が欧州市場の文化を理解するのが面倒であるがために、北米市場向けほどにローカリゼーションに積極的にならないのだ。

 もちろんビジネス規模が大きく使用言語が基本的に英語のみというメリットが北米市場にはあるが、欧州文化は敷居が高いと思いこんで腰が引けているのである。比喩的にいうなら、北米に駐在するならばそのまま飛行機に搭乗するが、欧州の場合はまず書店に飛び込んで歴史の本を買って準備しようとする。こんな違いがある。

 当然ながら勉強することは悪くない。しかし、勉強しないと前進できないとの先入観が強すぎるのは本末転倒だ。そこで、ビジネスパーソンに求められる文化理解レベルを具体的に示す必要を痛感したのである。

 ローカライズすべきかどうか、ローカライズをするにあたって考えるべき点は何か、その際の判断基準や参照すべき項目は何か。これらを整理すれば、仮説をたてながら一歩を踏み出せるのではないか。そう考えた。

 一方、日本企業がローカリゼーションにふたたび目を向け始めたのも、私がローカリゼーションマップの活動を始めたのと同時期の5-6年前である。

 なぜ“再び”なのか?

 1950-60年代は米国や欧州の物真似で「安かろう、悪かろう」であったが、しだいに適切な価格の高品質商品と評価されるようになる。この時期にローカリゼーションの重要性が強調された。

 しかし急激に日本の経済力が高まるにつれ、企業も自分の商品に顔がないことを弱みに感じ始める。日本の文化を商品に込めるのが大きな課題になってきた。1980年代半ばあたりからで、ローカリゼーションが顧みられなくなるのは、このタイミングである。

 再びローカリゼーションに目を向け始めたのは2000年代の半ば以降だ。韓国などの企業がローカリゼーションで新興国市場を制覇している事実に気づいた。他方、2008年のリーマンショックを契機に、一気に北米・欧州市場からアジア市場に舵を切った。そこで先進国と同じコストの製品では「売れない現実」に直面したのである。ローカリゼーションを考慮するのは必然だった。

 以上がローカリゼーションマップの動機と全体的背景である。

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この記事の著者

安西 洋之(アンザイ ヒロユキ)

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