Zebras and Company(ゼブラ アンド カンパニー/以下、Z&C)は、昨年リリースした、ファイナンスプランをデザインする新事業「Finance For Purpose(以下、F4P)」を活用し、ミャンマー農村部の課題解決を目指すベンチャー企業の約1億円の資金調達をサポートした。F4Pの第1号事例だという。
また、支援先企業の成長と社会的インパクトを確信し、Z&Cとしても約1,000万円の投資を実行したとしている。
F4Pとは、「思いのあるファイナンスプランをデザインする」をコンセプトに、資金調達モデルや資金提供者像を作り出すZ&Cの新事業。「自分たちの想いと時間軸に合う資金調達の方法がわからない」「資金調達はしたものの投資家と意見が合わなくなって困っている」といった起業家の課題を基に、企業が求める社会的インパクトと成長の両立を支援すべく、2021年9月にリリースされた。
経営者が抱える「資金調達に関する固定観念」や「資金調達・金融に関する投資家との知見・経験の差」などの課題に対し、エンジェル投資・企業の戦略投資・純投資・銀行融資・国や地域からの支援など、複数の資金調達方法を組み合わせるブレンデッドファイナンスの考え方など、資本と経営、社会的インパクトがつながり、持続的に活動できるファイナンスプランのデザインを提供するという。
今回の支援先企業は、ミャンマーの地方の零細事業者や生活者に金融や物流のサービスを提供し、排除される人のない経済をつくることを目指す2015年創業の日系ベンチャー企業。
低所得層へ小口融資を行うマイクロファイナンス機関に向けクラウドシステムを提供する金融クラウド事業と、農村で小規模な商店を営む人に食品・日用雑貨などの販売・配達を行うコマース事業の2事業を展開しているという。
※企業名は、ミャンマーの社会情勢を鑑みて非公開
今回は、約7ヵ月間にわたりブレンデッドファイナンスのスキームを用いて、エンジェル投資、株式型クラウドファンディング、助成金などの組み合わせに加え、Z&Cからも約1,000万円を出資し、合計約1億円の調達を実現した。
実際に行った工程
フェーズ1においては「Theory of Changeの策定」を行って、社会的インパクトを起点とした戦略を描き、その上で、ヒト・モノ・カネの調達プランを練る。
フェーズ2では、実際の資金調達に並走する。投資家やその他金融機関への提案、さらなる選択肢の検討など様々な手段を尽くす。
また、毎週2時間の定例ミーティングを行い、事業の棚卸しと戦略策定を実施。最初に議論したのは、支援先企業が起こしたい社会的インパクトを起点に、事業戦略を整理し再定義する「セオリーオブチェンジ(Theory Of Change/TOC)」だという。その後TOCの議論を踏まえ、新たな事業戦略や資金調達プランの議論に移ったとしている。
今回同社が計画する成長シナリオは、10年以上の時間がかかるとしても大きな規模へ成長していく可能性が高いとし、配当の形で株主還元するよりも、IPOを目指す形が向いていると判断し、資金調達のプランを策定したと述べている。
セオリーオブチェンジ(Theory Of Change/TOC)とは
TOCとは、社会課題の解決を目指す事業に必要なものとして、アメリカで考案され世界中で広がっている経営骨子の考え方のこと。具体的には、「自分たちが取り組んでいる社会課題が、どのような仕組みの中で生まれて来ているか」「その課題に、どのように働きかけて変化を起こしていくのか」を説明する理論のこと。
今回の支援先企業は、「社会的不公正を是正する」という理念を掲げて、2015年からミャンマーにコミット。2021年2月以降、同国内では政変のリスクが生じているものの、実際に事業を開発してきた企業だという。今回の資金調達は、経済的合理性があり長期目線で見れば大きな成長・リターンが見込める事業であるという点を丁寧にバランスよく伝えたことで、応援投資・共感投資を受けることができたのではないかと、Z&Cは述べている。