なぜ「サステナビリティ経営」が注目を集めるのか
環境・社会・経済の持続可能性への配慮により、事業のサステナビリティ(持続可能性)向上を図る「サステナビリティ経営」。ビジネスパーソンにとっても“耳慣れた”キーワードになりつつある。
リンクコーポレイトコミュニケーションズ 代表取締役社長の白藤大仁氏(以降、白藤氏)は、現代の企業は社会の公器として、「環境(E:Environment)」「社会(S:Social)」「ガバナンス(G:Governance)」というESG観点での持続可能性を考慮した発展を目指すべきだとする。これができない企業は存続が難しい状況にあるという。そしてなぜ今、サステナビリティ経営が注目されるのかについて、「3つの市場とその変化」に着目すべきだと語る。
1.資本市場の変化
世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は「運用資産すべてでESGの観点」を取り入れ、また世界最大の投資会社であるブラックロックは2020年から投資戦略の指針に サステナビリィティの観点を入れることが重要だと何度も発信している。
このことからも分かるように、「短期的な業績重視の投資基準」から「長期的な企業価値」への注目度が高まっていると、資本市場で起きている変化の潮流を「長期化」という言葉で表現した。
2.商品市場の変化
現代の消費行動は、“消費以上の何か”が求められ、脱プラスチックやアニマルフリーなどのような次世代を見据えた社会課題を考える「エシカル消費」が当たり前になりつつある。
このことからも分かるように、「個人」の消費欲求が満たされた現代では、消費者は「社会」の抱える問題に着目した消費活動を重視するようになり、商品市場では「社会化」という変化が起きていると述べた。
3.労働市場の変化
「人口減少」や「転職者数の増加」、「価値観・モチベーションの多様化」という3つの要素により、企業は中長期的に人材を雇用・確保することが難しくなっている。
では、企業はどうすればいいのか。白藤氏は従業員側にも企業側にも変化が必要だと述べる。従業員は、会社を単に「働く場所」ではなく、成長が見込める場所なのかという判断基準を持つことが必要だとし、その期待値を会社に伝えるべきだとした。会社は従業員の期待値を把握し、要望に応えることで「働きがい」を高めることが必要だと強調する。この「従業員と会社の関係性」の変化は、今話題となっている従業員エンゲージメントに表れる。
白藤氏はこのようにサステナビリティ経営が注目される背景を説明し、みさき投資 代表取締役社長の中神康議氏(以降、中神氏)にバトンをつないだ。中神氏は日本経済や日本社会の現状を示す調査データを共有し、以降に続くパネルディスカッションに向けて問題提起をした。