デロイト トーマツ グループは、2021年度の有価証券報告書を分析し、業績連動報酬へのESG要素反映状況について調査した結果を発表した。短期または中長期のインセンティブのいずれかにESG要素を反映する企業の割合が2020年度の24%から倍増し、52%となったことがわかったという。
短期インセンティブ、中長期インセンティブそれぞれへの反映について内訳を見た場合、短期インセンティブでは前年度の15%から27%に増加し、中長期インセンティブへの反映割合では前年度の15%から35%にそれぞれ増加している。ただし、短期インセンティブについては英国のFTSE100企業、米国のS&P500企業と比較し依然低い水準となっている。
また、ESG要素を反映している企業においても単に「ESGの取り組みを反映」といった記載に留まったり、反映方法が不明確な例があったりし、具体的なESG指標の開示やESG指標の反映割合の開示などに課題が見られるという。
調査結果の概要は以下のとおり。
日・英・米における業績連動報酬へのESG要素反映状況についての調査結果
環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を役員報酬における短期または中長期のインセンティブのいずれかに連動させている日本の企業割合は、2020年度の24%から2021年度52%に大幅に伸びた(図1)。
内訳を見た場合、短期インセンティブへの反映では2020年度の15%から2021年度27%に増加し、中長期インセンティブへの反映割合では2020年度15%から2021年度35%にそれぞれ増加した。しかし、短期インセンティブへの反映について英国は77%(前年度66%)、米国は60%(前年度52%)であり、日本企業は依然として低い水準にある。一方、中長期インセンティブは英国の45%(前年度27%)に迫りつつある(図2)。
なお、報酬にESGを連動している企業のうち、業績連動報酬に反映する具体的なESG指標・指標の反映方法を開示している企業についても50%(前年度45%)と半数になった。しかしながら、依然として半数の企業は、具体的な指標・反映方法の開示がどちらかのみ、もしくはどちらの開示もない状況となっている。2020年度よりもESG取組みを役員報酬に連動させる動きは進んでいるものの、財務指標だけでなく非財務指標も重視した経営が投資家等のステークホルダーから求められる中、今後もより多くの企業が経営戦略・企業価値との関連や、非財務指標評価の客観性を示していくことが必要となる(図3)。