データから「価値」を引き出す考え方
インターネット上で1日に生成されるデータは、2.5エクサバイト。ちなみに人間の脳がせいぜい3テラバイト。ただ私たちの脳はその容量でも、ほとんど無駄な使い方をしているという。大量データを持つことは、武器にはなるが、そのままではほとんどが死蔵されてしまう。ではこうした大量のデータを、うまく活用するにはどうすれば良いのか? 中西氏はビッグデータの活用の方法について、ICTの3大価値という視点から以下のように提示する。
第一に「スケールメリット」、規模を大きくすることで得られる価値です。これまで捨てていた大量データを、捨てずに全部見てみることから何かが生まれます。この場合、大事なのはこれまでのように「仮説」や「モデル」にこだわらないことです。スケールメリットの例として、ゼネラル・エレクトリック(GE)社では、1秒間に1,000個のデータを吐き出す100個のセンサーを持つタービンを開発しました。センサーにより、データの量を増やして、より正確な最適化を実施したのです。データを速く分析することで異常検知を早期におこない、機械学習による予測も可能にし、これによりコスト20%削減したといいます。
第二に「スコープメリット」、多角的に分析することで得られる価値です。JRの次世代自動販売機の事例を紹介した。JRの自動販売機は、天候、外気温によって全面液晶パネルの表示画面を切り替えています。気温や季節というデータを、消費者にとってのニーズという側面から捉え直し、商品ラインナップの切り替えることで、消費者のライフスタイルにあわせ、価値を生んでいます。
第三に「コネクション」、繋げる、繋がることによって得られる価値です。様々なデータをつなげて考えてみる。大日本印刷の取り組みなどがあります。スマートフォンアプリに、パーソナルデータを最初に登録させ、あとはユーザーが買い物をする時、レシートをスマホのカメラでとりアップロードすることで、クーポンなどを発行します。普段は捨ててします紙のレシートが、スマホのカメラで、パーソナルデータに紐付けられることで、ユーザーにメリットを提供する。こういうタイプの活用は、ますます増えてくるでしょう。
では、こうして引き出される「データの価値」とはそもそも何か? 中西氏は、「価値」は「意味」と不可分であるという。そしてデータの意味は、コンテント(内容)とコンテクスト(文脈)によって、構成される。商品の差別化が難しくなった現在、コンテントよりも、むしろ新しいコンテクストこそが意味を持つ。データに「訊く」ということは、消費者の背景にある新たなコンテクストを読み取ることだという。
リアルな社会に固定化されていた知識や知恵を、データに戻して検証します。リアル情報をすぐにデータ化し。今までの経験や勘を知識に変える時代が来ています。こうして知識として活用できるようになったデータを「スマートデータ」と私は呼びます。 現実世界からデータを集め、分析して現実に戻してあてはめる。このサイクルを回して価値を作るというプロセスが行なわれているのです。