日鉄ソリューションズ、NTTデータ経営研究所、日本の農村を元気にする会、NTTコミュニケーションズ、エムスクエア・ラボ、北海道大学、高知県安芸農業振興センター、高知県農業協同組合、土佐北川農園、高知県安芸郡北川村、高知県安芸市は、ローカル5Gを用いたスマート農業の実現に向けた実証事業の採択を受け、1月より高知県北川村において、課題解決に向けた実証を開始する。
同実証事業では、高知県北川村および安芸市のゆず農園を実証フィールドとして、農園にローカル5G基地局を設置し、4K360°カメラやスマートグラスなどのIoT機器を活用した、1. モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション、2. スマートグラスなどを用いた新規就農者遠隔指導ソリューション、3. 自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービスの3つのテーマで課題実証を行い、ゆずの生産コストの低減、新規就農者の確保および育成を目指すという。
また、同実証実験では、ゆず生産にかかる課題解決を目指すとともに、ローカル5Gの「電波伝搬モデルの精緻化」「エリア構築の柔軟性向上」についても、技術実証として併せて取り組むとしている。
実証の概要は以下のとおり。
期間
- 技術実証:2022年12月1日~12月21日(済)
- 課題実証:2023年1月10日~2024年3月31日(予定)
実施場所
- 高知県北川村内のゆず農園※一部農園は2023年4月より実証開始予定
- 高知県安芸市内のゆず農園※2023年4月より実証開始予定
役割
- NTTデータ経営研究所:各種連絡調整、定例会などの会議主催、普及啓発活動の検討および実施、成果報告書取りまとめ
- 日本の農村を元気にする会:課題実証の取りまとめ、課題実証ソリューションの社会実装の実施主体
- NTTコミュニケーションズ:技術実証の実施主体、課題実証(モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション、スマートグラス等を用いた新規就農者遠隔指導ソリューション)の技術支援
- 日鉄ソリューションズ:ローカル5G環境構築の実施主体
- エムスクエア・ラボ:課題実証(モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション)の実施支援
- 北海道大学:課題実証(モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション)の実施支援
- 高知県安芸農業振興センター:実証技術の普及活動への協力
- 高知県農業協同組合:安芸地区の生産者との連携支援、普及啓発活動の支援
- 高知県安芸郡北川村:北川村の生産者との連携支援、普及啓発活動の支援、課題実証ソリューションの社会実装の実施支援
- 高知県安芸市:安芸市の生産者との連携支援、普及啓発活動の支援
- 土佐北川農園:実証フィールドの提供、実証に関するデータ収集の支援
取り組み内容
1. モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション
小回りの利く農機であるモバイルムーバー(運転台車)に、農薬散布用ホースおよび草刈り用アタッチメントを装着し自動運転させることで、自動での防除・草刈りの実現を図る。車両に取り付けた4Kカメラの高精細映像を、ローカル5Gネットワークを介して遠隔監視制御拠点へ伝送し、遠隔監視制御拠点にいるオペレーターが遠隔でモバイルムーバーを監視する。有事の際には緊急停止・緊急発進などの遠隔操縦をすることも可能となる見込み。
各種作業のための生産者の常時随行が不要となるため、生産者の作業負担の軽減を行うことができると想定し、防除にかかる作業時間については従来比で50%削減、草刈りにかかる作業時間については従来比で35%削減することを目標とする。実際の圃場で同ソリューションを試験導入することで、機能検証や経営改善効果の検証を行う。
2. スマートグラスを用いた新規就農者遠隔指導ソリューション
安芸地区では、従事者の高齢化などにより、ゆず生産の新たな担い手の確保・育成が求められているという。同ソリューションでは、Avatourを利用した「バーチャル圃場訪問システム」による新規就農希望者の確保、「遠隔指導システム」による新規就農者受け入れ体制の強化を目指す。
「バーチャル圃場訪問システム」については、圃場に設置した4K360°カメラの高精細映像を、ローカル5Gネットワークを介してリアルタイムに伝送することで、新規就農希望者向けイベント会場などの遠隔地にいる人々の仮想的なゆず栽培圃場への訪問の実現を図る。同実証においては、バーチャル圃場訪問システムを、従来の圃場見学の代替手段として活用可能なレベルに到達させることを目標とする。
「遠隔指導システム」については、スマートグラス(Vuzix M400)を装着した複数の新規就農者が、ローカル5Gネットワークを介して遠隔指導拠点にいるベテラン従事者から一度に指導を受けられるようにすることで、効率的な指導の実現を図る。同システムを活用することで、新規就農者の指導にかかる工数を従来比で33%削減させることを目指す。
生産者の指導する内容としては、ゆずの生産・品質向上に直接的に結びつく作業内容である剪定・病害虫判断・収穫/選別(未経験者対象)を対象とし、遠隔指導による剪定・病害虫判断によって収穫量が従来比で10%増加することを目標として、導入効果の検証を行う。
3. 自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービス
生産者が1、2で紹介したソリューションなどを導入する際の負担を軽減するため、モバイルムーバーやスマートグラスなどの機器を複数の生産者で共同利用し、サービス事業者が自動防除時の遠隔監視や遠隔指導パッケージの提供などを担う「シェアリングサービス」の実証を実施する。
複数の生産者でシェアリングを行うことで、ソリューション導入にかかる生産者のイニシャルコスト、ランニングコストを低減することができるため、多くの生産者へこれらのソリューションを展開することが可能になると想定。同サービスでは、モバイルムーバーやスマートグラスなどのスマート農機の導入・利用にあたって生産者が負担するコストを32%低減させることを目標とする。