楽天グループ、日清食品が抱える課題と取り組み
「データドリブン経営」という言葉が登場して久しいが、実際にそれを実現できている企業はどれほどあるのか。モデレーターの水上氏は、日本におけるデータドリブン経営の現状として、ガートナージャパン株式会社が2024年1月29日に発表した調査結果を提示した。
この調査結果によると、データの利活用で全社的に成果を得ている企業の割合が全体の約3%だった。そして、データ活用に対する取り組みについて、「該当するものがない」と答えた企業が約6割に上ることが明らかになった。これらを受けて水上氏は、データ活用に取り組む企業と取り組まない企業の二分化が進んでいること、そしてデータ活用に取り組んでいても成果を得られている企業は一握りであることを確認した。
その上で、データ活用に取り組む企業として、楽天グループ株式会社と日清食品ホールディングス株式会社を挙げ、両社の登壇者を紹介。それぞれの企業における課題や取り組みについて尋ねた。
最初に問いに答えたのは、楽天グループの高橋氏だ。現在、楽天ブックスや楽天Kobo、楽天チケットなど、11の事業を統括している高橋氏だが、同ポジションに就任した当初は、「事業部によってデータ分析の方法が異なることに苦労した」と語る。
そこで高橋氏は、自らが管轄する全事業部で、着目するメトリクスを揃えた。具体的には、売上や原価、利益などの管理会計PLの項目と、CVRやCPAといったデジタルマーケティングの指標だ。また、それにともなってデータを管理するためのフォーマットも整備し、レポート形式も統一化したという。
一方、日清食品ホールディングスのCIOとして、全社的な情報化戦略の立案と実行に当たる成田氏は、「以前はそもそも全社的なデータ分析の土台自体がなかったことが課題だった」と語る。
その一例として、複数のシステムがあっても共通のマスター基盤がないために、データを統合できなかったことを挙げた。また、部門ごとにデータ分析への取り組みの差があったことも、データ分析の土台構築を阻む要因になっていたとのこと。営業やマーケティングなどの部門では、データ分析のカルチャーが根付いているものの、各部門で別の分析基盤を利用しており、また、他の部門ではそもそも共通のシステムがなくExcelやAccessなどで属人的にデータを管理していた。
そこで成田氏は、各部門の個別的な視点を脱して全社的な視点へと切り替えることを目指し、全社共通マスター基盤を整備して各システムのデータを集約する取り組みを始めた。