大手金融機関は、フィンテックにどう向き合えばいいのか?
すべてのベンチャーが成功するわけではないので、一つ一つのスタートアップ情報に振り回される必要はないが、「改善するほうが、改革をするよりも易しい」ということは覚えていたほうがよいと私は考えている。大手企業がそれまで相手にしていなかった小口のニーズに対応しようとするには、大掛かりな改革が必要だ。煩雑な手続きを省いたり、多少のリスクは取れるようにしたり、フットワークの軽いオンライン部隊を設立したり、小口のお客さんを大切にするような文化を醸成するのは、恐ろしいほど大変だ。
一方で、小さな足がかり市場をとらえたベンチャーにとって、社内の体制を整え、信頼性を向上させ、社会的な認知度を高めることは、改善の範疇として行いやすい。それまで100円の利益を得るために必死にやっていた企業にとって、より良いサービスを提供することで利益が200円に上がるならモチベーションも高まるが、その逆は無理な期待だ。したがって、どのフィンテックも大手の金融機関にとって、いずれは顕在的な脅威になると考えている。そのときに暴動を起こしても時すでに遅しである。
一つ目のアプローチ:既存事業の強化
前述した「セキュリティ」と「信頼性」という“機能”が、ベンチャー側の弱みである。それらの機能を高め、ベンチャーから逃げるように改善を続けるのである。また、ベンチャーが提供する価値である「求めやすさ」「使いやすさ」を高める努力も必要である。多くの銀行はオンラインバンキングにおける体験(UI/UX)を向上させる努力を続けているようではあるが、まだまだ顧客視点での改善になっている企業は少ないように感じる。