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INNOSIGHT流イノベーションの興し方

なぜ手法を徹底的に学んでもイノベーションを興せないのか──不遇を解消する、超・直感力のススメ

『イノベーションのための超・直感力』解説コラム:第1回

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 スタートアップや大企業の新規事業において、イノベーションを成功させるプロセスには数々の落とし穴があります。「リサーチしたら他社で類似アイデアが見つかったので、この案は不採用」「プロトタイプの精度は重要だから何度でも調整しよう」「マイクロマネジメントは現場の士気を下げるから早めに権限移譲を」などなど。これらは一見、正しいように見えて、実は新規事業開発にブレーキをかけることにつながる行動です。とりわけ、重要な意思決定とは思わずに無意識で行ったことが、罠への誘導であることも少なくありません。筆者の近刊である『イノベーションのための超・直感力』の内容かから、こうした罠への誘導を見逃さず、新規事業を成功に導くためのヒントを数回の記事として紹介していきます。

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破壊的イノベーションはただ「混乱をもたらす」だけのものなのか?

 昨今、新規事業を生み出すことは、非常に多くの企業の関心事になっています。また、大学や研究機関にとっても、研究にとどまらず、事業にしていくことが課題となり、さまざま取り組みが行われています。さらに政府は2022年を「スタートアップ創出元年」として 、日本経済の成長を促そうとしています。

 こうして国や研究機関、企業などに大きく期待されている「イノベーション」ですが、いったい誰のための活動なのでしょうか。というのも、作り手や使い手、そして企業と、イノベーションには多くの人が関わり、そして多くの人に影響を与え、負の側面もあるからです。

 例えば、書店や図書館で入手しにくい書籍をアマゾンは世界中から入手可能にした反面、商店街にあるような小さな書店は存続できず、廃業を余儀なくされているところが目立ちます。書店に限らず、インターネット通販というイノベーションによって、多くの企業は苦しい事業環境に見舞われています。AIの登場によって失業を心配するビジネスパーソンもいらっしゃるのではないでしょうか。特に、ChatGPTの登場は、技術への期待とともに、多くの人の仕事を奪うのではないか、悪用されるのではないか、さまざまな懸念を社会にもたらしています。

 『イノベーションのジレンマ』で初めて紹介された「破壊的イノベーション」という言葉のもとになっている「Disruptive(ディスラプティブ)」は、日本語に訳すと「混乱を生じる」というニュアンスに近い言葉です。著者のクリステンセンは、イノベーション、特に破壊的イノベーションは、既存事業者の安定を脅かす存在であることを指摘したのです。しかし、だからといって、混乱を生むためにイノベーションが存在するとは言っていません。

 イノベーションはむしろ、それまで「不遇」な環境に置かれた人にとって重要な選択肢を提供しています。アマゾンは、読みたい本が手に入らない人にとって非常に便利な選択肢となっていますし、ネット通販は外出がままならず不自由な人にとっては福音です。

 同様に、スマートフォンはパソコン操作ができない人もインターネットにアクセスを可能にしました。そもそもインターネットは、アクセスが困難だった世界の情報を求めやすくした技術として世界に普及したことを忘れてはいけません。

 日本から生まれた「回転寿司」というシステムは、行きつけの店があるお金持ちでなくても気軽にお寿司が食べられるようになった偉大なイノベーションです。また、料理のレパートリーが少ない人には、動画レシピアプリという選択肢によって、レパートリーは大きく広がりました。あるいは、カメラの知識がなくても、格好いい写真を撮りたいと願っていた人たちにとって、インスタグラムは救いの選択肢となったのです。

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この記事の著者

津田 真吾(ツダ シンゴ)

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