Handbookというのは、インフォテリアが出しているクラウド上でモバイルコンテンツを管理するソフトウェア。このツールを導入し、前線の営業現場でiPadを活用している企業が増えてきている。企業がiPadを社員に持たせる場合になぜこのツールが必要なのか、一般のコンシューマーが営業でタブレットを使う場合と比べてどういう意味があるのかなどを、インフォテリアの穴沢さんに聞いた。
――Handbookというツールについて教えて下さい。
Handbookは、2009年に出来た製品です。当時はまだiPhoneしかなくiPadは出ていませんでしたが、今後モバイルとクラウドは確実に企業に浸透するだろ言うという社長の平野、副社長の北原の思いから出したものです。「モバイルコンテンツ管理ソフトウェアをクラウドで提供する」という位置づけの製品です。発表当初も学校法人など、問い合わせはそこそこありましたが、やはり2010年にAppleがiPadを出してから反響が増え、たくさんの問い合わせと導入をいただくようになりました。
――そもそも企業がiPadなどのスマートデバイスを使う時、Handbookというソフトウェアがなぜ必要になるのでしょうか?
iPhoneとかiPadは一般のコンシューマ向けのものですが、企業の法人利用にもかなり役立つものです。ただ、当初は企業からの期待は大きかったものの導入に対してはいくつかの課題と抵抗があったんですね。ビジネスマンにとってのiPadはWebの閲覧やメールでしか使えませんでしたが、こうした個人向けのツールをビジネス向けに使うにはどうすればよいかということで考えだされたのがHandbookです。企業だけではなくて大学など教育機関にも使われることを視野にいれて作っています。
企業がタブレット導入に踏み切れない理由
――iPadの法人利用に対する抵抗感というのは、具体的にはどのようなことでしょうか?
やはりセキュリティの問題です。これはiPadがセキュリティ的に脆弱であるということではなく、企業の側の情報管理、情報ガバナンスという課題です。iPadは簡単に持ち出せて活用できるし、ドキュメントのビュワーやプレゼンテーションツールとしても非常に役に立ちます。ただ、それだけに仕事のドキュメントを、各自がタブレットに入れて持ち出すことに対しては、企業としてはリスクがともなうわけですね。そこで、資料を「配信する」というやり方が有効になるのです。配信するといっても、メールに添付して送ったりするのでは煩雑ですし、危険度はかわりません。そうではなくて、ドキュメントをサーバー経由で配信し、企業の管理者によって閲覧をコントロールするという仕組みが解決策となります。もちろんユーザー側の利便性をそこなうことなく、これを実現することが重要です。
――過失や置き忘れに伴う情報の漏えいとかが、問題になるのでしょうか?
それも問題ですが、やはり資料をセキュアに配信できるということが、ガバナンス上大事なのです。企業の場合は、社内資料をダダ漏れにしてしまうと大変ですよね。営業資料といえども、広報のチェックのないものは公開できないという会社が多いのです。たとえばお客様への商品提案資料はアクセスコントロールして、適正な営業マンやマネージャーだけにしか配信しない、というようなことが必要となります。また、配信された資料はタブレット上では表示できても、タブレットからさらにメールなどで転送できないよう制御すれば、資料が知らぬ間に拡散される心配がありません。このようなアクセスコントロール機能と機密漏洩を防ぐセキュリティの様々な機能を搭載してコンテンツの配信を安全におこなえるクラウドサービスとして始めたものがHandbookです。当初はオンプレミス版という社内設置型もだしましたが、今はほとんどクラウド型が利用されています。
――タブレットとパブリッククラウド活用も進んでいます。大手企業がまだ踏み切れないのは、やはりガバナンスの問題でしょうか?
たとえば竹中工務店様の場合、建設現場で技術資料を活用する目的でHandbookを導入されていますが、資料の公開時期をコントロールできる点などをご評価いただいています。特定のユーザーのアカウントを管理できて、時期がすぎれば端末側のファイルを削除できたり更新したりすることができるという点です。