広がる企業の動画活用
企業による動画活用と聞くと、IR動画やYouTubeでの公式チャンネルを最初にイメージする人が多いのではないでしょうか。確かに、これらは一般化しました。しかし、それ以外にも、企業による動画の活用は広がっています。様々な使われ方を見ていきましょう。
動画広告
若年層へのリーチ、ターゲットを絞った広告として、動画広告の出稿機会が拡大しています。無料動画サービスGYAO!に加えて、2014年からキー局によるテレビ番組の見逃し配信が本格化しています。また、Facebookやニュースサイト、キュレ―ションメディアによる動画広告の提供も始まっています。
自社サイトでのPR/顧客ロイヤリティー
コーポレートサイト上で、CM動画等を配信している例は多く存在します。特に、消費者向け製品を扱う大企業が、CM等の既存映像を再利用してPR用に動画配信をスタートする例が多く見られます。全方位的なPRに加えて、コアファン向けに動画を提供する例もあります。コンテンツ、エンターテイメント業界で多くみられます。また、最近では、オリジナル動画を含めて、動画ポータルを構築する取り組みも見られます。最近の例として、New Balance Channelがあります。
Eコマース
楽天市場やジャパネットたかた等では、ECサイト上で動画を活用しています。ECでは、サイト上でのエクスペリエンスが売上に直結するため、他の業態よりも動画活用が進んでいるものと思われます。
リードジェネレーション
見込み客の生成におけるビデオの利用です。B2B製品に加えて、購入に検討を要する消費者向け製品が向いています。この用途では、製品を動画で視覚的に見せることでのリード生成への影響が見えやすいため、今後の拡大が期待されます。日本では一部でしか事例がないですが、米国では、オラクル、シトリックス等のIT企業で多くの活用例があります。
営業支援
接客・営業時に顧客に製品動画を見せる活用方法です。自動車販売、製薬業界等でこうした使い方がスタートしています。見込み客の購買意思決定に影響を与えうるため、効果が見えやすい用途です。
社内コミュニケーション/トレーニング
社員向けのトレーニングや幹部のメッセージ伝達として社内での動画活用です。最近はトレーニング目的の導入が増えています。特に、販売員を多く抱える保険業界や社員数の多いグローバル企業、アルバイトの多い業態などが、先行しています。動画による理解促進、記憶残存効果は、有識者の調査結果を見なくとも、認められているのでしょう。
カスタマーサポート
顧客からの問い合わせに対して、使い方等の動画を活用する例です。カスタマーセンターへの入電が多い製品に対して、特に、口頭で説明するより見せた方が早い内容について動画が有効なのは納得できます。この目的で積極的に動画を活用している企業としてジャパネットたかた、LGが挙げられます。
動画活用のこれから
映像が持つ説明力、説得力の高さは誰もが認めるところでしょう。それでも、動画を企業で活用することは、管理職の世代にとっては、まだ少し特別なことかもしれません。更なる活用に向けた課題としては、採算性が挙げられます。「動画は制作コストが高い」という声と「採算をどう見たら良いか分からない」という悩みが良く聞かれます。
動画制作はそれほど高くない
テレビCMのように著名タレントを起用した高品質の映像は確かにかなりの費用がかかりますが、そのイメージが心理的障害になっているケースが多いように見受けられます。目的に応じてどのような動画が必要かを冷静に見極めることが重要です。例えば、リード生成の目的で必要なのは製品の「説明動画」であり、その制作費はテレビCMに比べると桁違いに安価です。また、最近ではクラウドソーシングを活用して高品質・低価格を標榜する動画制作会社も出ており、選択肢は広がっています。
採算性をどう見るか
「採算性をどう見たら良く分からない」という状況は、動画配信の目的がいろいろ混ざっていたり、曖昧であるケースに多いと思われます。Webの制作・運用費と同じように考えてみればシンプルです。IRやPRの目的でコーポレートサイト上に動画を活用するケースでは、全社コストの位置付けでしょう。接客支援、リード生成など、事業目的で利用する場合は、目的を明確にした上で、ROIで採算性を見る必要があるでしょう。
こうした課題を解決し、企業はあちこちで普通に動画を活用するようになるのではないかと思われます。海外のグローバル企業では、リードジェネレーション、製品発表、恒常的なPR、社内のトレーニング、幹部から全社員へのメッセージ伝達など様々な目的で動画を活用している例があります。動画配信技術は今も進化しています。その恩恵を被り、企業活動に生かしていくのは、自然な流れと思われます。