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事業創造と価値創出のための「アート思考」

イノベーション創造をゴールとしたアート思考の実践──「パーパス進化モデル」で価値創出のステップを辿る

第5回

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 第1回から第4回までで、アート思考の概要から思考プロセス、過去の事例や現在の時代背景における意義など、様々な角度からアート思考を紐解いてきました。最終回となる今回は、アート思考実践方法について解説していきます。オリジンを起点にイノベーションを生み出していくアート思考は、抽象的な部分も多く、チャレンジのハードルが高いかと思います。そこで本記事では、アート思考に取り組む上で必要な思考の要素を噛み砕いて説明していきます。プロセスをご紹介した第2回と合わせて理解を深め、日常生活において実践してみていただけると嬉しいです。

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イノベーションから逆算したアート思考の使い方

 そもそも、アート思考を用いる目的は「イノベーティブな価値創造をし、ワクワクした未来を創ること」です。以下の図では、この目的から逆算したとき、アート思考でどのように頭と心を動かしていくのかを示しています。

 この図では、イノベーション創造は“感性”と“論理的思考”という2軸で構成されています。感性は右脳的、論理的思考は左脳的なイメージがあり、アート思考には右脳的なイメージがあると思いますが、実際は論理的思考も欠かせません。

 感性と論理的思考によるイノベーション創造を植物に例えて説明していきます。

 植物の最終的なアウトプットを葉とすると、アート思考においては「創造的なイノベーション」がそれにあたります。根本的な下支えの役割を果たす土壌が「蓄積している経験や知識」で、成長を促す茎(幹)の部分が「感性」です。そして、外側から全体を包括するようにサポートする水や肥料が「論理的思考」にあたります。

イノベーション創造の幹は「感性=オリジン」

 感性とは「何かを見たり聞いたりしたときに揺れ動く感情」で、個人差があるものです。

 感性を因数分解すると、

感性=蓄積している経験や知識+直感

と捉えることができます。「直感」とは、ひらめきを生んだり頭に浮かんだ要素を紐づけて発想へ変換したりする機能を指します。直感をフル稼働させるためには、感じ取るセンサーの役割を果たす「感度」を磨くことが重要です。

 感性とそれを下支えする直感、そしてさらにその下地となる感度の関係性を見ていくと、共通しているのは土壌となる「知識や経験の蓄積」です。

 冒頭の図を下から見ていくと、個人が所有している知識や経験からセンサーを通して発想へと変換し、感性へとたどり着きます。これは個人に深く関わるプロセスであり、この「感性」こそアート思考の「オリジン」だといえます。

イノベーションの土壌となる「経験・知識」

 「蓄積している経験や知識」が創造的なイノベーションの土壌となるので、大きなイノベーションのためには土壌となる経験や知識の絶対量を増やす必要があります。それらを増やすためのポイントが、「受容力(キャパシティ)」です。

 新しいものごとを広く受け入れる余裕を持っていれば、経験や知識の絶対量は必然的に増えていきます。この受容力を持つためには、自分自身を“客観視”することが大切です。常に自分視点に止まるばかりではなく、第三者のような俯瞰する目線を心がけることが、新しい知識や経験に寛容になることにつながります。

自分を客観視する養分としての「論理的思考」

 先ほど“客観視”というワードが出てきましたが、アート思考においてこの役割を担ってくれるのが「論理的思考」です。植物の例では水や肥料などの養分にあたる重要な存在です。

 下図は前述の図に矢印を足したものです。論理的思考は、幹である感性と同様に、蓄積されている経験や知識を土壌としますが、感性と別軸で捉えた場合に、感性を主軸とした右脳サイドすべての工程に客観的な視点で思考する役割を担ってくれます。

 「蓄積している経験や知識」を起点として、「◯◯だから△△だ」と段階を追って考えることが論理的思考の初歩であり、これを駆使することで心の動きや周辺での事象に対して客観的に思考することができるのです。

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この記事の著者

尾和 恵美加(オワ エミカ)

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