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組織によるイノベーションの時代

第1回

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組織的なイノベーション、道具としてのデザイン思考

 本連載では、プロセスに基づいた組織的イノベーションの実践に焦点を当てる。そのための道具としてデザイン思考も取り扱う。大きく分けて、イノベーション、デザイン思考、組織実践の3つのパートからなる。半年に渡って連載予定だ。

「イノベーション」、「デザイン思考」、組織実践写真4.「イノベーション」、「デザイン思考」、組織実践 連載の目的は3つある。1つ目は、組織の中でイノベーション実践に関わる人を支援すること。これまでワークショップや企業研修といった形で直接的な支援を行なってきた。そこでの経験や発見も踏まえた内容をお届けすることで、間接的ながら一人でも多くの人に役立てればと思う。
 2つ目の目的は、デザイン思考と学習理論を組み合わせたイノベーション・プロセスを提示すること。デザイン思考が優れている点の1つは、言語化しにくい個人個人の暗黙知を、各人の学習スタイルに合わせながら組織的に共有し蓄積できる点にある。その蓄積こそがイノベーションの原動力となる。一連のプロセスを是非紹介したい。

 3つ目の目的は、一人ひとりの才能や創造性を活かせる組織をつくるために、日本と西洋の特徴を融合させたハイブリッドな組織経営モデルを生み出すことだ。日本はこれまで海外の文化や技術を積極的に取り入れてきた。古くは漢字や仏教だ。そして、海外発のものを日本流にアレンジするのが実に巧みだ。

 イノベーション理論やデザイン思考を日本流に改善していく中で、より普遍的な組織経営モデルを生み出せるのではと期待している。また、逆説的に聞こえるかもしれないが、最終的に成果を出すカギとなるのは個人の創造性だ。さまざまな創造性の相互発揮が、組織によるイノベーションの時代には欠かせない。日本の組織が、価値ある製品やサービスを世界各地へ提供する支援ができればと思う。

 以上の目的を達成するため、連載ではイノベーション理論やデザイン思考はもちろん、日本と海外の文化的な違いを踏まえた学習スタイル、人によって異なる創造性の種類などを取り扱う。読者の方にとって、興味がある分野とそうでない分野にわかれることだろう。イノベーションは統合的なプロセスのため、扱う対象が広範囲にならざるを得ない。とはいえ、一方通行の連載になるのは避けたい。「この話をもっとくわしく聞きたい」「この部分がよくわからなかった」といった素直なフィードバックを気軽に頂ければと思う。繰り返しになるが、あくまで焦点は「体系的なプロセスによる組織的イノベーションの実践」にある。

 イノベーションを生み出すのは、魔法のようなひらめきではない。地に足を付けた地道な実行によってのみ実現が可能となる。様々な障害を乗り越えながら、組織と共に前へ進もうとする人たちへ、この連載が役立てば嬉しく思う。

 次回からの数回はイノベーションそのものがテーマになっている。イノベーションに対する誤解や、イノベーション実践における3つの壁などを取り扱いたい。

本稿内の出典・参考文献を以下にまとめます。

 
  1. Bloomberg Rankings. 2013. 50 Most Innovative Countries
  2. Lashinsky, A. 2009. The decade of Steve. Fortune, 160(10), 92?100.
  3. Masayoshi, Son (masason). "とても悲しい。スティーブ・ジョブズは、芸術とテクノロジーを両立させた正に現代の天才だった。数百年後の人々は、彼とレオナルド・ダ・ヴィンチを並び称する事であろう。彼の偉業は、永遠に輝き続ける。" 6 Oct 11, 8:08 am. Tweet.
  4. Drucker, P. F. 2006. Innovation and Entrepreneurship. Harper Business.
  5. Coutu, Diane L. 2001. Genius at Work: A Conversation with Mark Morris. Harvard Business Review 79(9).
  6. Bloomberg Businessweek Magazine. 2004.Voices Of Innovation: Steve Jobs
  7. Ries,Al. 2009. Are You a Left Brainer or a Right Brainer?
  8. Isaacson, W. 2011. Steve Jobs. Simon & Schuster.
  9. Tidd J, Bessant J, Pavitt KLR. 2000. Managing Innovation: Integrating Technological, Market and Organisational Change (2nd ed). Wiley: Chichester.
  10. Judson, K., Schoenbachler, D., Gordon, G., Ridnour, R., Weilbacker, D. 2006. The new product development process: let the voice of the salesperson be heard. Journal of Product & Brand Management 15(2/3), 194-202.
  11. Cooper, R. 1994. ‘Third-Generation New Product Processes.’ Journal of Product Innovation Management, 11 (1), 3-14.

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

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