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クリステンセン直弟子“しゅんぺいた博士”が語る「日本のイノベーションのジレンマ」

玉田俊平太氏インタビュー (後編)

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クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』の監修者である“しゅんぺいた先生”こと現在関西学院大学ビジネススクール副研究科長の玉田俊平太教授。後編は、クリステンセンの理論が日本にどのように受け取られたかについて語っていただくとともに、近刊の『日本のイノベーションのジレンマ』についてお話いただいた。 (記事上写真 : Photography by Keitaro Yoshioka )

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『イノベーションのジレンマ』への経営者の反応は冷ややかだった

クリステンセン氏の研究室にてクリステンセン教授の研究室の本棚 Photography by Keitaro Yoshioka

——前編では日本での刊行までをうかがいました。『ノベーションのジレンマ』が発行された後の反響はどんな感じだったのでしょうか?

玉田 本の推薦の言葉に、インテル会長のアンドリュー・グローブの一文があって「明晰で、示唆に富み、それでいて恐ろしい」と書いています。あの感覚が、当時のみんなの正直な感覚でしょうね。要するに合理的な経営をしたらだめだって書いてあるから、「これはちょっと、どうすればいいんだよ?」っていう感覚ですね。

——日本での出版後、日本の企業からの問い合わせとかきましたか?

玉田 これはええ、かなりいただきました。例えば、大手電機メーカー、通信会社、飲料メーカー、製造業、広告代理店、いずれも最大手の企業から声がかかり、この本のお話を繰り返しさせていただきました。

——経営者の反応はどうでしたか?

玉田 政府系金融機関主催で講演した後の食事会で、日本の大手の製造業の社長がいらっしゃったんですが、「今日の話は何かピントこないなあ」とおっしゃってました。その時これはまずいかなって思いましたね。ちょっとお年を召され過ぎてるっていうか、やわらかい頭じゃないと多分わからないのかなと。あと、「破壊的イノベーション」という言葉を、これまでの軌跡を超えるという意味での「不連続的イノベーション」や「画期的イノベーション」と誤解される方がやはり多かったという印象です。

——どうしても「画期的イノベーション」として誤解されてしまうと。

玉田 それは海外でも、日本でも誤解する人は多いんです。LED電球とハイブリット車とパソコンのうち、どれが破壊的かと質問されて、全問正解する人ってあまりいません。LED電球もハイブリット車も違って、パソコンが正解なのです。メーカーの方でもなかなか理解されないところです。破壊が相対的な概念だからです。自社の主要顧客にとって重要な性能が向上するタイプが「持続的イノベーション」、受け容れがたいほど性能が低下するのが「破壊的イノベーション」なのです。
例えばベンチャー企業の場合、自社のビジネスを全力で推し進めることは、自社にとっては持続的です。例えば、格安スマホは、それをやっているイオンなどにしてみたら持続的イノベーションですけど、auとかドコモやソフトバンク本体とかにとっては、破壊的なんです。 電球を作っていたメーカーにとって、顧客が低消費電力や長寿命に喜び、より高い価格で買ってくれるLED電球は持続的イノベーションです。ガソリン自動車を作っていたトヨタの顧客はハイブリッド車の低燃費に喜んで高いお金を払い、買い換えました。ハイブリッド車もまた、トヨタの顧客が喜ぶ持続的イノベーションです。
しかし、マイクロプロセッサを搭載したパソコンは、それ以前主流だったミニコンピュータの顧客にしてみれば、FORTRANもCOBOLも動かない、「オモチャのような性能の低い製品」で、およそ欲しいとは思わないタイプのイノベーションでした。そして、ミニコンピュータのメーカーは、顧客が求めないため、パソコンという破壊的イノベーションを、少なくとも当初は軽視してしまい、結局パソコンに「破壊」されてしまったのです。

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