働き方の変化:「個の力」と「コラボレーション」の重要性
2つ目は「働き方の変化」だ。今から90年前の日本では、働く2人のうち1人は農家だった。現在は20人に1人。農家の代わり増えたのが知識労働者だ。4人に1人が何らかの形で知識を活用した労働に関わっている。
このことは何を意味するのだろう。1つは、生産性を判断する基準の変化だ。どれくらい大きな土地や機械を持っているかという「物量」の世界から、どれくらい専門性の高い知識を持ち、どれだけの価値を生み出せるかという「成果」の世界へ変わりつつある。
その後訪れた情報社会では、「一元管理」がキーワードになる。20世紀に、フレデリック・テイラーが科学的管理法を提唱し、労働プロセスの客観的な把握ができるようになった。これにより、働く手順や方法を、1つの情報として管理できるようになった。結果的に、労働者は「管理する側」と「管理される側」にわかれ、階層化による大型組織の運営が可能になった。
21世紀における土台は、機械や階層ではなく、「流動的な知識」になる。専門知識の陳腐化は6ヶ月~2年で起こると言われている。仮に大学院で高度な知識を学んだとしても、社会に出る頃にはその専門知識は過去のものとなっている。「仕事を通じて学び続けることが求められ、互いの知識を活用し合うことで成果を出す働き方」が主流になるだろう。
産業社会や情報社会では、「タスクを分割し、手分けして処理する」という発想が生産性を高めた。土地の有無や管理システムの精度が重要であり、「大量生産や一元管理をいかに行うか」が主要な問いであった。
しかし、今後は「コラボレーション」が重要になる。そこにあるのは「互いの強みを活かし、いかに生産性を高めるか」という発想だ。専門性を十分活かし、他人と協力してチームプレイを発揮できる「個人的な力量」が求められるようになる。