「横断的なデータ活用組織を設置したのに成果が出ない」のはなぜ?
ただし、そうしたメンバーをそろえただけでは、上手くいかない場合もある。実際、西内氏のもとには「全社横断的なデータ活用組織を設置し、投資もしたけれど成果が上がってこない」という相談も多いという。この場合、意思決定とデータ分析のレイヤーがズレていることが考えられると西内氏は指摘する。
意思決定とデータ分析のレイヤーがズレているパターンには、大きく2種類が存在する。一つは、分析組織が社長直属で全社横断型の組織にはなっているが、事業部ごとの独立性が高く、施策や予算、戦略についても各事業部単位で意思決定をしているというケースだ。加えて、各事業の売上高に幅があるなど、事業部間でのパワーバランスが偏っている場合にも注意が必要となる。
そうした状態で全社横断型の大規模なデータ分析組織を設置しても、高い売上比率を出している事業部からは自分たちが稼いだお金を使う“コストセンター”のように見られてしまうことがある。また、各部門の独立性が高いままだと、新たに外部からやって来た分析チームの意見がなかなか受け入れてもらえないことも多い。
そしてもう一つのパターンは、意思決定がトップダウンに偏重しているケース。すべての部署にデータ分析担当者を配置したものの、意思決定がトップダウンか、あるいは社長のマイクロマネジメントであった場合、どうなるだろうか。100万円単位の案件であっても社長を通すとなると、各部署にいる分析者が何かを提案しても、結局は社長の一存で判断が覆ってしまう可能性がある。これもまた、分析と意思決定のレイヤーにギャップがあるがゆえに成果が生まれにくい例だ。
これら2種類の失敗パターンを踏まえ、「意思決定をする人と分析者のコミュニケーションの密度が重要だ」と西内氏は語る。一人で分析業務を進めていると、分析の方向性や解釈の仕方を確認する必要に迫られることがある。そうしたとき、雑談のように会話が始まり、意思決定者や現場に詳しい人たちから30秒足らずでフィードバックがもらえる環境が理想だという。
逆に1ヵ月、場合によっては四半期ごとにしかインプットがもらえないような環境では、当然だがデータ分析の生産性は下がる。定期的な会議を開くとしても、その頻度が重要だ。頻度が下がれば下がるほど、進めてきた分析に後々大きな修正が必要になっていく。「早い段階で確認・修正すればするほど、日々の意思決定に分析の知見を役立てやすくなり、データ活用はより大きな意義を持つようになる」と西内氏は主張する。
また、データマネージャーや分析者といったメンバーが組織を横断して学びをシェアすることも重要だ。全社的な勉強会が定期的に開かれていれば、知見や経験が共有でき、他部署でもノウハウを展開するチャンスが生まれる。これらも当然、頻度が高ければ高いほど、よりスピーディな学びへとつながる。