「デジタル化」ではない、経費精算“DX”の意味
経費精算は組織運営上、必ず発生する業務ではあるものの、それ自体が直接に売上や利益を創出するものではない。そのため、経費精算にかかる時間や作業コストは可能な限り圧縮し、従業員が本業や新たな価値創出に集中できる環境を整える必要がある。これこそが、経費精算にDXが必要な理由だと大堀氏は語る。
大堀氏はまず、レガシーな組織が抱える経費精算の課題を指摘する。まずは、紙の取り回しによる負荷が大きい点だ。一般的に経費申請には手書き・手入力が必要とされ、承認者には紙の証憑を確認する手間が発生する。経費申請や承認に出社が必要となり、紙による経費精算フローではリモートワークの妨げとなる点も課題だ。そして最後に、インボイス制度や電子帳簿保存法下では、そもそも紙では対応が不可能な場合が存在する。
「マネーフォワード クラウド経費」(以下、クラウド経費)は、これまでアナログで行われてきた経費精算業務をDXし、上記のような課題をすべて解決できると、大堀氏は説明する。同サービスはペーパーレス運用を実現しており、モバイル対応で場所を選ばず経費精算が可能な他、インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応している。
とはいえ、ここまでの機能であれば世に数ある他の経費精算サービスと大きくは変わらない。では、何が違うのか。
クラウド経費の優れている点は、そのカバー範囲の広さだという。そもそもマネーフォワードは、「デジタル化」と「DX」を違う意味として捉えている。アナログな作業で発生する紙のペーパーレス化、モバイル対応、法令対応をすることが前者で、そこからさらに業務効率化(生産性向上)、ガバナンス強化を実現するのが後者だ。大堀氏は「多くのサービスのカバー範囲がデジタル化に留まる中で、マネーフォワードは企業のDXを実現することができる」と語る。
ところで、これまで紙で運用していたものをデジタル化したものの、かえって業務が複雑になってしまったという経験はないだろうか。いくらペーパーレス化・モバイル化を目指したとして、従来よりも手続きが複雑になったり、工数が増えたりすることは誰も望んでいないはずだ。単なるデジタル化だけでは、こうした事態が起こり得る。
本来、デジタル化によって業務を効率化し、生産性を向上させ、業務や組織、事業の変革(トランスフォーメーション)することこそが、企業の目指すべき目的である。すなわち、“DX”だ。「内部統制やガバナンスが担保された上で経費精算業務を効率化し、従業員体験(EX)や従業員満足度を向上させる。これこそが、あるべき経費精算DXの姿です」と大堀氏は語る。