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『誰もがリーダーになれる特別授業』監修・河野英太郎さんが語るリーダー育成の成功法

新刊インタビュー:『誰もがリーダーになれる特別授業』

 プロジェクトであれ部署であれ、人を引っ張る存在は勝手に現れるものではありません。しかし、いま日本企業は「リーダー」を求めてはいても、その教育は充分にできているわけではないといいます。今回、『誰もがリーダーになれる特別授業』の監修・河野さんに、リーダー教育についてうかがいました。

[公開日]

[著] 渡部 拓也

[タグ] 人材教育 ビジネススキル

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誰もがリーダーになれる特別授業

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世界のエグゼクティブが学ぶ
誰もがリーダーになれる特別授業

著者:ハーミニア・イバーラ
訳者:新井宏征、監修者:河野英太郎
発売日:2015年9月10日
価格:1,600円(税別)

第1章 「外から変わる」原則:リーダーとして行動し、考える方法
第2章 仕事を再定義する
第3章 チームを超えたネットワーク、社外のネットワーク
第4章 自分自身を楽しむ
第5章 ステップアップのプロセスを管理する
結 論 行動しましょう

 翔泳社では9月10日(木)、『世界のエグゼクティブが学ぶ 誰もがリーダーになれる特別授業』を刊行しました。著者は「最も影響力のある経営思想家」を選ぶThinkers 50に選出されたことのあるハーミニア・イバーラさん(隔年発表で、2013年は9位)。

 リーダーシップ育成を専門領域とする彼女は、世界トップクラスのMBAプログラムを有するビジネススクールのINSEADで研究と教育を行なっています。本書では、彼女が気づいた従来のリーダー教育に潜む過ちと、研究を尽くした最新のリーダー教育が詳細に解説されています(前著は『ハーバード流 キャリア・チェンジ術』)。

 イバーラさんは従来のリーダー教育を「リーダーとは何か考えること」から始めるため、リーダーとして行動ができないのだと指摘します。リーダーになるには、まずリーダーとして行動すること――「アウトサイトの原則」が重要だといいます。

 その中でも社外ネットワークを構築し、普段自分が接しない人たちと交流することを勧めます。アウトサイトが変化することで、自分の内面も変化するというのがイバーラさんの主張の概要です。つまり、リーダーとして行動し、外部の人たちと交流するようになれば、その経験をもとに考えることでリーダー然と振る舞えるようになるのです。

 今回、本書の監修をしていただいたデロイト トーマツ コンサルティングの河野英太郎さんにお話をうかがいました。河野さんはベストセラーとなっているシリーズ『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を執筆され、リーダー教育にも大きな関心を持っていらっしゃいます。

リーダーになるためのアウトサイトの原則

――本書で最も強調されている「アウトサイトの原則」、平たく言えば「まずリーダーとして行動する」という主張は、どこが特徴的なのでしょうか。

河野:リーダーシップについて書かれている従来の本は、成功しているリーダーを研究し、そこから「あるべきリーダー像」を作ります。そして、そんなリーダーになるための手法を解説していることが多いんです。

 ですが、本書ではアウトサイトから取り組んでいくべきだとあります。つまり、まず行動して自分の視野や世界を広げて、周りの反応や得られた経験から、リーダーとしての考え方を養っていくべきだと主張しています。

 リーダーになった人は、自分さえパフォーマンスを出していればよかった頃から、部下など他人にもパフォーマンスを発揮してもらい成長させなければならなくなったとき、大きなハードルを感じます。「こうやれば簡単だよ」と他人の仕事を自分でやってしまうことがあると思います。すると、その仕事自体はこなせても、チームとしてのパフォーマンスやモチベーションは下がってしまうんです。

 ですが、リーダーは人に動いてもらうために行動することが重要です。そこで悩んでいる人が多いんですが、そうした悩みに新しい視座を与えている点で本書は画期的だと私は思いました。

優秀だった人がリーダーになると、能力の罠に陥る

――本書では「能力の罠」という言葉とともにそのことに言及されています。仕事ができる人ほどリーダーに任命されるので、ついつい部下に任せるべき仕事を自分でやってしまう。そのほうが早いんですが、リーダーとしては失格だと。とはいえ、優秀な人ほど他人に任せることが怖いのではと思います。そこはどう乗り越えればいいんでしょうか。

河野:本書では外堀を埋め、仕事が回らなくしてしまい、他人に任せるほかなくなる状況にするというストーリーを展開しています。私自身がどうしてきたかというと、自分が最終的に尻拭いできる範囲であれば、とにかく任せてみるというスタンスでやってきました。ただ、自分が徹夜をしてもできなさそうな仕事だと任せっきりにはせず、一緒に作業したり、定点チェックをしたりします。

 リーダーとマネジャーの違いもありますね。イバーラさんも書かれているように、マネジャーは管理が主な役割です。しかし、リーダーには、向かう方向を決めて人をそこに導く役割があります。向かうべきところを決めるには、内部環境を知ることは当然として、外部環境を知ったうえでその変化に合わせて、自分たちはこうあるべきだと決めないといけません。

リーダーシップを発揮するための社外ネットワーク

――イバーラさんはそのために、社内よりも社外にネットワークを作ることが重要だといいます。そのメリットとハードルはどういうものがあるのでしょうか。

河野:自分の世界が広がることが最大のメリットですね。視野や思考の幅が広がります。人を説得するときも「自分はこう思う」と言うだけでなく、「ライバル企業じゃこうやっている」「業種は違うけれどこんなことをしている企業もある」と言うと、説得力が全然違います。

 ハードルとしては、最初に自分の抵抗感がありますね。どこに行けばいいのか分からないし、やるべきかどうかも判断できません。無駄なんじゃないかと思ったり、周りから怪しい行動だと思われたりしないか心配になります。ですが、それでもネットワークは広げるべきです。

 私が前にいた会社は比較的大きく、部署を超えればまったく違う世界があったので、それなりのネットワークを持っていると思っていたんです。ですが、会社を超えると本当に世界が違ってくるんですよ。

 それは自分で書籍を出したときに実感しました。例えば出版社に章立てのデータをExcelで送ると、必ず修正版はWordで返ってくる。Wordは使い慣れていないのでもう一度Excelにしてから修正すると、またWordで返ってくるんです。同じ作業をしているのに、使っているツールからして世界が違いますよね。

 また、自社では契約書が交わされるまでは何もサービスしてはいけなかったのに、出版社では書籍が出るまでの契約書がないんです。これにはとても驚きました。原稿をこのまま別の出版社に持っていってもいいんじゃないか……と考えたりしましたね、もちろんやりませんが(笑)。契約書には縛られない自由さがあるということですね。

 社外ネットワークができていけば、自分が当たり前だと思っていたことが実は常識でも何でもないと気づかされます。

形から入るからこそ、中身が伴ってくる

――外堀を埋める、社外ネットワークを作る、というのは環境を変えることだと思います。言いかえれば形から入ることでもありますが、そのことに否定的な方もいるかもしれません。そういう方には利点をどう伝えればいいのでしょうか。

河野:二者択一ではないんですね。形から入るからといって、中身を考えないわけではありません。ただ、行動せず結果を出さないまま考えていても「休むに似たり」です。まずは形から変えていくと、周りからの目も変わりますから、自分にもいい影響があるはずです。形と中身、どちらから始めるかはニワトリと卵の問題かもしれませんが、どこかでニワトリか卵を作り出さないといけません。

――本書ではそれを形、つまり行動することから始めようと主張されているわけですね。すると中身もついてくると。本書は、具体的にはどういった方に向けた本なのでしょうか。

河野:リーダーになろうとしていて壁にぶつかっている方なら、吸収は早いと思います。ですが、望まずともリーダーになってしまった方でも、抱えている課題は同じはずですから役に立ちます。また、リーダーを育てたいと考えている方々――シニアリーダーだったり人事部の方だったり、リーダーの周囲にいる方にも読んでもらいたいですね。

日本企業には「リーダー育成」の意識と方法が足りない

――河野さんご自身が持たれている「リーダー」に対する問題意識はあるのでしょうか。

河野:あります。私が以前所属した会社では徹底的なリーダー教育を行なっていて、「リーダーの仕事は自分の後任を育てること」だと定義していたんです。ですから、管理職になった途端、リーダーはこうあるべきだと教育されます。そんな社風ですから、上から降りてきた仕事や指示でも、末端の課長ですら「上がこう言っているからこうしよう」とは言わないんです。「こうしなければならない。なぜなら~」と必ず自分の意見として伝えるんですよ。

 それが当たり前だと思っていたので、別の会社に転職した後もそうしていたんですが、周りがまったくそんなふうではないので自分がバカみたいに見えることもありました。さらには、リーダーにとって部下は身を挺して守るべき存在だとは限らないという世界もあるんだと驚きましたね。

 もしかしたらそれが日本の組織の類型なのかもしれませんが、だからこそリーダー育成という概念がもっと広がってほしいと思いますね。自著のタイトルを決めるときも、「リーダー」を入れたいと提案したら、売れなくなると言われてしまったんです。やはり日本の企業がいまの状況を抜け出すにはリーダーなしではありえないと思っています。もっと多くの人が「リーダー」に注目して、議論が活発になって、知見が増えていくといいかなと。

 日本人はサービスや技術に対する目は肥えているんです。部分的な業務効率化にも優れています。ですが、それらを統合するリーダーシップが不足しています。だから、そこが得意なアメリカ人に勝てないわけですね。リーダーが育ってくると状況は大きく変わるんじゃないでしょうか。

次世代のリーダーはどう育てる?

――日本の社会や企業では、リーダー教育が必要だということは認識されているのでしょうか。

河野:ある調査によると世界3300社、日本105社の人事部のマネジャー以上の方にヒアリングしたところ、最大の課題としてリーダーシップの不足が挙げられました。対応できているのか尋ねると、できていないという答えが大半でした。ではどうしたらいいのかというと、それが分からない。

 その答えの一つとして多くの企業で行なっているのが、内省すること、つまりリーダーとして考え、「自分はこうありたい」と決めて、将来の日付を入れて実現していくというセオリーです。もう何年もこれをやってきています。ですが、うまく行っていない組織が多いんですよ。この課題に対するヒントが本書です。

 次世代のリーダーといまのリーダーの価値観のギャップもあるそうです。ミレニアムズという世代の定義があります。2000年以降に成人した人と、それ以上の世代を分ける考え方です。おおよそ35歳前後が境界線ですね。

 両世代の何が大きく違うかというと、35歳以上の世代はポストや報酬を与えると頑張る傾向が高いんですが、ミレニアム世代はそれらを与えても反応がよくない。どちらかといえば目的合理性や社会貢献、社会との繋がりといったことの優先順位が高いんです。そういう世代をモチベートする方法はいままでと違って、「これをやればトップになれる」ではなく「これをやれば社会に貢献できる」と言わなければ動きません。

 Biz/Zineでもインタビューされていた多摩大学大学院の田坂広志さんは思想や志、人間性といった言葉をよく使われます。これらは、ともするとビジネスにおいては違和感をもって捉えられることが多かった言葉です。しかし、最近は若い世代を中心に自然に受け止められていますよね。

 このように、リーダー自体はずっと求められていると思いますが、求められているリーダーの質はかなり変わってきています。やはり「外を見る」のが大切です。それは自分の仕事やそれに関わることだけでなくてもいいんです。リーダー教育によっては絵を描かせて、芸術からインスピレーションを育むこともあります。人工知能が人間の仕事を奪うと言われていますが、だからこそ想像力がいま以上に必要とされるようになるでしょう。

――社外ネットワークを作ったりや外の世界に出たりというとき、自分の仕事に直接役立てようと、関係するところに行ってしまいがちですが、必ずしもそうではなくてもいいということなんですね。

河野:そうですね。いまお話ししていることも会社の仕事ではなく業務外で仕入れたネタばかりですから(笑)。自社の仕事のことしか知らないリーダーより、いろんなネットワークを持っているリーダーについていきたい世代がどんどん増えていっているんだと思います。

WhatではなくHowから始まるリーダー教育

 本書ではリーダーに任命され、毎日忙しく仕事こなす登場人物たち――イバーラさんの教え子がモデル――の悩みや課題が詳細に描写されます。それは、日本の中間管理職の典型的な姿にも見えます。しかし、「アウトサイトの原則」に従って行動することで、彼らはリーダーとして成長していくのです。

 いま、リーダーと名のつく肩書に押しつぶされそうになっている方には、ぜひ本書を通じて自分のリーダー論が間違っていないか、確かめてみてもらいたいと思います。これからの時代を引っ張るリーダーを育成したいとお考えの方にも、本書はおすすめです。

誰もがリーダーになれる特別授業

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誰もがリーダーになれる特別授業

著者:ハーミニア・イバーラ
訳者:新井宏征、監修者:河野英太郎
発売日:2015年9月10日
価格:1,600円(税別)

第1章 「外から変わる」原則:リーダーとして行動し、考える方法
第2章 仕事を再定義する
第3章 チームを超えたネットワーク、社外のネットワーク
第4章 自分自身を楽しむ
第5章 ステップアップのプロセスを管理する
結 論 行動しましょう

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