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投資家の期待を集める「人的資本開示」

人的資本開示における「企業価値向上ストーリー」のつくり方──投資家の「納得・共感」を得られる開示とは

第2回

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 2023年は「人的資本開示元年」と呼ばれていますが、有価証券報告書における人的資本の開示義務化がきっかけとなり、多くの企業が自社の人的資本を開示するようになった1年でした。しかしながら、「まずは義務化に対応する」ことが優先され、投資家の期待を集められている企業はまだ多くないのが現状です。そこで今回は、投資家の期待を集めることができる人的資本開示のポイントについて解説していきます。

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「合理的」かつ「情理的」なストーリーで納得と共感を醸成する

 第1回でお伝えしたとおり、義務化に対応するだけの人的資本開示は、各社同じルールの下で型通りに行われる、いわば「規定演技」だと言えます。

 もちろん、規定演技にはきちんと取り組むべきですが、投資家から選ばれるかどうかは統合報告書やサステナビリティレポート、ヒューマンキャピタルレポートなどの任意開示における「自由演技」が鍵になってきています。自由演技において「自社の人的資本が、いかにして未来の企業価値向上に結びつくのか」という道筋を、“価値向上ストーリー”として示すことが重要です。

 価値向上ストーリーを示す上で、押さえておきたいポイントが2つあります。それは、「合理的」かつ「情理的」なストーリーであることです。

 合理的なストーリーというのは、人的資本に投資することで企業価値が向上する因果関係を、筋道立てて示せているものです。「なるほど、この会社はこうやってステークホルダーへの価値向上を図っていくのか」と、投資家を納得させることができれば合理的なストーリーだと言えるでしょう。

 一方、情理的なストーリーというのは、人的資本経営にかける想いや目指すべき未来像を語ることで、読み手や聞き手の感情を動かすことができているものを指します。「この会社が描く未来にワクワクする」「この経営者は本気なんだ」というように、投資家の共感を得られれば情理的なストーリーだと言えるでしょう。

 上記のように、原則として「合理」と「情理」のバランスのとれた価値向上ストーリーを示すことが重要になりますが、人的資本の開示においては、まずは合理的であることに重きを置くべきです。というのも、日本企業が発信するメッセージは情理的な方向に傾きがちだからです。「創業時から変わらぬ想いを胸に~」「〇〇の実現は私たちの切なる願いです」といったメッセージを目にすることが少なくないと思いますが、このようなウェットなストーリーだけで投資をしてくれる投資家はいません。

 投資家の納得や共感を得られるストーリーとは、第一に合理的であり、その中に情理的なエッセンスが散りばめられているものです。「湿ったナラティブ」ではなく、「乾いたストーリー」を意識して自由演技に取り組むのがよいでしょう。

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この記事の著者

白藤 大仁(シラフジ ダイジ)

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