クニエは、新規事業の立ち上げ後の「事業グロース」における成功と失敗の要因抽出を目的として、事業グロースに携わったことのあるビジネスパーソンを対象とした実態調査を実施した。
同調査における事業グロースとは、「新規事業をリリースした後の事業拡大・成長に向けた取り組み」を指す。一般的に新規事業として注目される、検討開始からリリースまでのゼロイチのフェーズではなく、その後の1→10、10→100などの拡大フェーズにおける取り組みを対象としている。
事業グロースの成否、最重要KPI達成度
同調査の対象者が回答した事業において、事業開始から3年経過時点での最重要KPIの達成度が100%以上を成功、100%以下を失敗と定義して調査したところ、81%の新規事業が事業グロースに失敗していることが分かった。なお、最重要KPIとして設定される項目の上位は「売上」「利益」「販売数・契約数」であった。
失敗する事業グロースにおける特徴
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事業戦略
- 事業目的が曖昧なままフェーズが進む
- ロードマップが「絵に描いた餅」で終わる
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マーケティングミックス
- ターゲットに合わせて商材を拡充できない
- クロスセルができず、収益性を高められない
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組織
- 「試行錯誤」を言い訳にして、事業の規律が緩む
- 社内事情による事業移管に翻弄される
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事業見直し
- 施策の検討・見直しが後手に回る
- 潜在顧客の声を軽視する
マーケティングミックス:ターゲットに合わせて商材を拡充できない
商品・サービスについて事業開始時点では、失敗層は「顧客のニーズ・課題に合致するものになっていた」「機能や付随サービスを可能な限り盛り込んだ」と回答した割合が低い。顧客が誰で、どのような商品・サービスがフィットするかの見極めが甘いままリリースに至ると、事業の失敗につながると言える。
また、事業開始後では、「顧客層の広がりに応じて商品・サービスを追加できた」が低い結果に。事業グロースの観点では、事業が拡大するにつれてターゲット層が広がり、商材へのニーズもより多様化していく。初期の商材に加えて、よりマスなターゲットに適した商材を拡充できない限り、事業グロースは実現できないとクニエは述べている。
組織:「試行錯誤」を言い訳にして、事業の規律が緩む
失敗層は、「新規事業における数値目標は見直しを前提としているものだ」と回答した割合が10ポイント以上高く、また「新規事業における各施策は、試行錯誤しながら柔軟に見直すべきものだ」と回答した割合も高い結果となった。
クニエは、一般論として、新規事業は事業の不確実性が高いため、計画的な進め方ではなく、試行錯誤的な進め方が望ましいが、このグラフは真逆の結果を示していると述べた。事業グロースの観点では、事業のフェーズが進むことで顧客や業界の理解が進むため、事業の不確実性は徐々に低下することが分かる。「新規事業は試行錯誤するもの」という考えに固執し続けると、数値や施策管理の規律が緩みやすく、事業グロースの成功には事業のフェーズに合わせた管理を行うべきであるという。
調査概要
- 目的:事業グロースの成功、失敗要因の把握、分析
- 手法:インターネット定量調査
- 調査エリア:日本全国
- 回答者数:スクリーニング調査1371名、同調査314名
- 対象:従業員100名以上の企業において、「新規事業の事業開始前」および「事業開始後3年経過時点まで」のフェーズに携わったことのある経験者
- 実施時期:2023年12月