データを扱う「駆動輪」とビジネスを扱う「操舵輪」という両利き
今回は、データインフォームドを実現する前提として、「データ活用をうまく進めるための2つの役割」をご説明するところから始めさせていただきます。その2つの役割とは「駆動輪」と「操舵輪」です。
データを用いて考える、データを活用する。そういう言葉を耳にしたとき、人は真っ先に「データを上手く取り扱う技術」のことを思い浮かべます。当然ながら、データを扱うことができなければ、データに触れることができず、データから判断材料となる情報をつくりだすことができません。
その一方で、いくらデータを上手に、そして素早く加工することができたとしても、それだけでは「データを活用できている」ということにはなりません。いくらボールを投げるのが上手くても、野球ができるとは言えません。キック力が強くても、サッカーができるとは言えません。その時々の状況に応じて求められる役割を理解し、点を取るとか、しっかり守るとかいった、適切な行動を取ることがもとめられます。
データを扱う技術は、スポーツでいうところの、ボールをうまく投げることができる、強くボールをけることができる、速く走ることができる、といった能力に似ています。それがなければ困るけれど、それだけあれば良いというわけではない。そういう能力です。
そこで必要になるのが「データをビジネスのために使う技術」です。これを分解すると、「目的設定能力」と「データの解釈能力」となります。
まず「目的設定能力」ですが、データ活用の目的を設定し、その目的のためにどのようにデータを活用するかを考えることが重要です。これを怠ると、どれだけデータを加工しても全く意味がありません。
そして「データの解釈能力」ですが、データを加工して作成されたアウトプットの内容を理解し、そこから得られる示唆を導き出すことも必要です。そうしなければ、データ分析を「やっただけ」で終わってしまいます。
つまり、データを扱う手前と後ろに「ビジネスとデータをつなぐ役割」が求められているのです。
こうした役割を、私は「操舵輪」と呼んでいます。ハンドルを切って方向を決める役割です。データを扱う力は「駆動輪」です。車を前に進めるための動力源です。
駆動輪が無ければ、推進力がありませんので、物事は前に進みません。しかし、駆動輪だけでは行きたい方向に進むことができませんし、場合によっては壁に激突したり、崖から下に落ちたりしてしまいます。
駆動輪と操舵輪の2つが合わさって初めて、データ活用が成功するのです。