デザインとは何か、デザインとリサーチの四象限とは
「デザインリサーチの“デザイン”をAIでエンハンスする」と題する本セッションに登壇したのは本村章氏。本村氏は、デジタルサービス・モバイルアプリの開発、内製化支援サービスなどを提供するゆめみの執行役員/シニアサービスデザイナーであり、人間中心設計の専門家として専門機構「HCD-Net」から認定を受けている。
セッションの冒頭、本村氏は、大林寛氏と中村将大氏によるプロジェクト「デザインのよみかた」の活動記録をまとめたのWebサイト[1]を参照した。そこにはデザイン史家のジョン・ヘスケット氏によるデザインの定義に関する、やや謎めいた「デザインの意味」が論じられていた。
「『デザインとはデザインを作るためにデザインをデザインすること』です。同語反復で意味が取りにいくいのですが、デザインの意味は、この言葉に端的にまとめられていると私は考えています」(本村氏)
上記の言葉には「デザイン」というフレーズが4回登場する。本村氏によれば、それらは一つひとつ指し示す意味が異なるのだという。
それぞれの意味を補うと「デザイン(分野)とはデザイン(制作物)を作るためにデザイン(企画)をデザイン(行為)すること」となると本村氏は説明した。つまり、一般に「デザイン」と呼ばれる活動は、ある制作物を作るために企画を立て、その企画を実現するために行為することの全体を指し示すのだ。
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さらに、本村氏は、デザインと不可分な関係の「リサーチ」についても言及した。デザインを実践するうえでは、その方向性や手法を定めるためにリサーチが必要になる。また、その逆に適切にリサーチを行うには、デザインのアプローチでリサーチの対象やプロセスを見極めるのが有効だ。
そして、両者の関係の性質は、理論的か実践的か、また科学的か実証的かによって分類が可能だという。本村氏は、デザインとリサーチの関係を「理論的/実践的」「科学的/実証的」の二つの軸による四象限で整理した論文[2]を参照し、本セッションでは「実践的かつ実証的」に位置する「デザインを通じたリサーチ」に焦点を当てたいと話した。
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「デザインを通じたリサーチ」とは、デザインの制作とリサーチの行為を相互に繰り返しながら価値を創出する活動を指す。
「デザインによって新たな問いが生まれ、その問い対する仮説を立てるためにリサーチをし、さらにその仮説を検証するためにデザインをする。この循環が『デザインを通じたリサーチ』です。明確な答えがない状況で、不確実性を乗りこなしながら、新たな価値を構築していくことが、この活動の特徴といえます」(本村氏)
そして、本村氏はこの活動に生成AIの登場が大きな影響を及ぼしており、私たちのデザインへの関わり方にも変化をもたらしていると訴える。
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[1]大林寛、中村将大「デザインという言葉を整理しよう」(2018年2月15日、デザインのよみかた #1)
[2]Trygve Faste, H. Faste「DEMYSTIFYING “ DESIGN RESEARCH ” : DESIGN IS NOT RESEARCH , RESEARCH IS DESIGN」(2012)