実践者が描く「ヘルスケアの未来創造図」
各登壇者による一問一答のあとは、各自が考えてきた「ヘルスケアの未来創造図」をテーマに議論が進んだ。
岡崎氏は、AIの活用法を「人が賢くなるための活用」「人の仕事を効率化するための活用」の2つに分け、「医療従事者・研究者の支援」「患者・人間の支援」という2つの観点で具体的な活用法を列挙した。「医療従事者・研究者の支援」においては、医療知識の向上、手術や診断の支援が「人が賢くなるための活用」、研究や事務の支援は「業務効率化の活用」にあたる。
一方で「患者・人間の支援」では、医療格差の解消や疾患の早期発見・予防といった、これまでに専門的な知識が必要とされていた領域でAIが貢献。さらにユーザーの相談相手になること、タスクの代替でストレスを低減することなどといった活用も進むと見解を示した。
浜本氏は、「AI駆動型の次世代ワークフローの実現」を掲げ、4つの目標を挙げた。それは「診療負担の軽減」「医療安全の向上」「研究活動の支援」「医療DX人材の育成」だ。ワークフローの実現に向けて、人とAIの役割の棲み分けに気をつけるべきだと唱える。
「医療従事者をはじめ、あくまで人間が中心になって医療は行われる必要があります。しかし、人はヒューマンエラーを起こす可能性がある。一方AIに依拠しすぎるとリスクが生じるので、双方のバランスをふまえてワークフローを構築していきたいと思います」(浜本氏)

デジタルツインで実現する、究極のSociety5.0と自律AI
ここで栗原氏からパネリストに「技術が進展した先に、医療をAIにすべて任せる未来はくるか」と問いかけられた。これに対し、浜本氏は「技術的には可能だが、考慮すべきは患者さんの心情。現時点での調査では、AIを使ってほしいという声がある一方で、AIドクターによる診療には抵抗を示す人が多い」と回答。しかし世代が変わり、VTuberをはじめバーチャルな対象物を受容する傾向が進んでいるため、「将来的には人を介さずにAIのみで医療を担う可能性もあるのではないか」との見方を示した。
続いて栗原氏は、「ヘルスケアの未来創造図」として「究極のSociety5.0」と「道具AIから自律AIへ」という2つのキーワードを提示した。サイバーフィジカル、つまり人間のデータをはじめ、センシングによってあらゆる情報がデジタル空間に集約・解析されることでデジタルツインが実現。これを基盤に、人とAIが共働・融合する未来がそう遠くない時期に訪れると同氏は見る。

保科氏は、ヘルスケア分野におけるAIエージェントの発展について言及。近い将来に栄養士をサポートするAI、医療検査を手伝うAIといった、各領域で機能するAIが登場し、ゆくゆくは患者ごとに一対のAIエージェントが包括的に支援するようになると予測。加えてヘルスケア産業や研究を支えるAIエージェントと会話しながら、賢く協調する世界が待っていると展望を述べた。
こうした未来の実現にあたっては、浜本氏が言う「人間による信頼」が鍵になると保科氏も同意する。その一歩目として活用のハードルが低い場面、日常生活の中でChatGPTと対話するなど、まずは人々が生成AIを使ってみることが大切だという。
最後は保科氏から「ヘルスケアという領域は、その特性からやみくもに生成AIを使うわけにいかず、活用が難しい面もある。それを理解した上でどう使えるのかを考え、チャレンジしてもらいたい」とメッセージが送られ、セッションは幕を閉じた。