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倒産リスクが高い企業群は全国で12.7万社 業種別では「建設業」が最多──帝国データバンク調査

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 帝国データバンクは、今後1年以内に倒産する確率を個別企業ごとに算出したリスク指標を基に、全国の「高い倒産リスクを有する企業」について調査・分析を行った。

倒産リスクが高い企業群は全国で12万6960社

 2024年の倒産件数は9901件となり、前年の8497件を1404件上回った。新型コロナウイルス状況下の“ゼロゼロ融資”の影響から、2021年は大きく倒産件数が減少。しかし、融資返済や物価高、人手不足などさまざまな環境の変化により、3年連続前年を上回る倒産が発生し2024年はついに1万件に迫る件数となった。また、休業・廃業、解散した企業は6万9019件となり、前年に比べて9914件・16.8%の大幅増加であった。

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 帝国データバンクでは、企業が1年以内に倒産する確率を10段階のグレードで表す指標「倒産予測値」をもとに特にリスクが高い企業(グレード8~10)を「高リスク企業」ととらえ、分析を行った。倒産予測値算出対象の国内企業147万社のうち、2024年12月時点で高リスク企業は全体の8.6%にあたる12万6960社であった。2023年12月時点の12万7280社と比較すると320社の減少となった。

業種別では「建設業」が2万8817社で最多

 業種別に高リスク企業数を見ると、「建設業」が2万8817社と最も多く、前年と比較すると4445社増加した。2番目に多い業種は「製造業」の2万8571社であり、3303社増加。「小売業」が2万6464社と続いた。

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 業種を細かく見ると、「建設業」では「職別工事業」が1万4301社と最も多く、同じく建設業の「総合工事業」も1万785社と3番目に多かった。2番目に多かったのは「運輸業」の1万1828社。「小売業」のうち、1万134社は原材料や光熱費、人件費の高騰、物価高による節約志向の影響を受けている「飲食店」であった。食品の値上げはピーク時より落ち着いてきたとはいえ、買い控えや価格転嫁の限界感などもあり、「飲食料品小売業」も上位であった。

 高リスク企業の割合で見ると、「飲食店」が44.4%と最も高く、「飲食料品小売業」が39.8%と業界全体の4割前後が高リスク企業となった。「出版・印刷・同関連産業」が34.6%で続き、近年のペーパーレス化・デジタル化の波を受け3社に1社が高リスク企業となっている。

注目業種

①建設業

 倒産件数は1890件と前年より13.1%増加、高リスク企業は2万8817社と18.2%増であった。大きな問題として人手不足や人件費高騰、資材高がある。稼働率の低下による工事の長期化や低採算で受注を余儀なくされ資金繰りが厳しくなるケースや、受注したくても人手が足りずに請け負えないケースが見られる。中堅以上は賃上げが進む企業も聞かれるが、大半を占める中小零細では思うように進まず人材確保が困難な企業も目立つ。加えて代表者の高齢化や後継者難の問題から休廃業・解散を選ぶ企業も増えており、「現状維持が精いっぱい」との声も多く聞かれるという。

②飲食店

 倒産件数は894件と過去最多を更新した一方、高リスク企業は1万134件と前年より14.5%減となった。コロナ禍の国や自治体の各種支援策により救済されていた企業が、ゼロゼロ融資の返済・物価高・賃上げと様々な外部環境の変化から資金繰りに行き詰まっており、経営状況の厳しい企業が休廃業を含めて淘汰されていることも要因と考えられると同社は述べる。

 しかし、前述のとおり高リスク企業割合は44.4%と業種中分類のなかで最も高い。大手はコスト削減や価格転嫁で採算が改善する例もあるが、小規模飲食店は原材料や人件費の上昇が負担となっている。物価高で価格転嫁が難しく、倒産リスクは当面、高水準のまま推移すると見られる。

③飲食料品小売業

 倒産件数は311件、前年比5.8%と微増であった。高リスク企業は9159社と13.7%減となり1万社を下回った。物流費・店舗光熱費・仕入価格の高騰などの影響を受け、価格転嫁ができない企業の淘汰が進んでいる。一方で、仕入価格高騰に対応した値上げや生産性向上策などで収益性の改善を図る企業も増え、高リスク企業は減少傾向にあるが、割合を見ると39.8%と高水準である。

④運輸業

 倒産件数は471件、前年比7.0%と微増であった。高リスク企業は1万1828社と24.4%の大幅減であったが、依然1万社を超え、燃料高や人手不足による労働力減少などの厳しい経営環境がうかがえる。高リスク企業の割合も25.3%と高い水準であった。経営者の高齢化も進んでおり、倒産だけでなく休廃業・解散企業も706件(前年比8.3%増)と増加している。

 これらを背景に事業を継続・成長させるための手段としてのM&Aも進んでいる。荷主側の理解もあり、価格転嫁は徐々に進んでいると聞かれるが、他社乗り換えを危惧し強く価格交渉できないなど業界構造の特性はいまだ拭いきれないという。2025年4月で働き方改革関連法の適用(2024年問題)から1年が経過するため、改めて影響を見つめ直し、取引の適正化が行われる必要があると同社は述べている。

⑤製造業

 倒産件数は1145件、前年比26.1%増となり、7年ぶりに1000件を超えた。高リスク企業は2万8571社と13.1%増となった。前年比で高リスク企業数が多い業種を細かく見ると、上位7位までを製造業が占めている。特に「一般機械器具製造業」では前年比66.0%増(2023年:1918社、2024年:3183社)、「鉄鋼、非鉄金属・金属製品製造業」は前年比62.5%増(2023年:1839社、2024年:2988社)と大幅に増加。原材料・エネルギーコストの高騰や物流コストの上昇が収益を圧迫し、賃上げによるコスト増が追い打ちをかける。価格転嫁の進捗次第で業績に差が生じ、転嫁が難しい中小企業ほど厳しい状況に直面する可能性が高いという。さらに、為替の影響への対応も注視していく必要があるとのことだ。

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 注目業種の高リスク企業割合について過去からの推移を見ると、「飲食店」「飲食料品小売」「運輸業」は2023年と比較すると低下した。しかし、コロナ禍前の2019年と比べると高リスク企業の割合は2倍以上に増えており、高止まりしている。「建設業」は事業者数が多いため、高リスク割合は高くはないが、件数は最も多い業種である。

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都道府県ごとの高リスク企業割合は差が見られる

 都道府県別に高リスク企業の割合を見ると、産業構造の違いや地域の景気に左右されるため、3%台から14%まで差が見られる。原材料高や人手不足、賃上げの影響は全国的に共通しているが、産業構造の違いや地域の景気、大手企業の業績、設備投資動向によってリスクの程度が異なる。これらの要素が複雑に絡み合い、各都道府県の倒産リスクに影響を与えている。

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売上高「10億円未満」が高リスク企業の9割超を占める

 売上高別に見ると、「1億円未満」が8万1430社と最も多く、続いて「1〜10億円未満」が4万1168社であり、「10億円未満」の企業で全体の96.5%を占めた。

 従業員数別も同様の傾向で、「5名未満」が7万9873社と最も多く、「5人〜10人未満」が2万886社と続き、高リスク企業は小規模企業が圧倒的に多いことがわかる。

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