ビジネスパーソンの契約リテラシーを向上せよ
──Sansanとリセは、2025年4月に資本業務提携を締結しました。提携の目的をそれぞれのお立場からお話しください。
尾花:Sansanが提供するサービスの特徴は「アナログ情報のデジタル化・データベース化」という価値を尖らせている点にあります。Contract Oneについて言えば、誰もが契約情報にタッチできる環境をつくることで、ユーザーの契約リテラシー向上につながるのです。
一方で、ユーザーからは「契約書を結ぶ際に弁護士の知見を基にしたレビューがないと不安」という声を聞いていました。その点、リセはAIレビューの領域で機能を作り込んでいます。両社の強みが重なりすぎず、お互いの事業を伸ばし合えると考えました。
藤田:米国のリーガルテック市場を見ると、契約管理分野での導入が圧倒的に進んでおり、巨大市場になっています。国土が大きく紙を送っても到着までに時間がかかるため、早くから契約書の電子化に取り組んでいたからでしょう。

藤田:かたや日本では紙と電子の契約書が混在し、デジタルでの管理もなかなか進んでいません。そんな中「紙のデータ化」から着手するSansanの取り組みが腑に落ちたのです。日本企業の課題にフィットしたSansanのサービスに当社のサービスを組み合わせれば、より多くのお客様の課題を解決できると考え、ご一緒するに至りました。
メソポタミア文明から続く契約書の歴史
──両社の提携によって、具体的にどのようなことが実現可能となった/なるのでしょうか?
尾花:現在は、両サービスを導入いただいた場合、契約の締結前にLeCHECKで書類の内容を固め、締結後はContract Oneで管理することができますが、将来的には機能連携の可能性もあります。
たとえば、既存の取引先との契約更新時に、Contract Oneで過去の契約を参照しながらLeCHECKによるレビューを入れられると良いですよね。下請法やフリーランス法など、昨今の様々な法改正により、これまで口約束で済んでいた事項も契約書に明記する必要が出てきています。Contract Oneに格納済みの契約書をLeCHECKでチェックし、見直すべき契約書を洗い出す。そんな機能連携も将来的には考えられます。
──最後に、各社の展望をお聞かせください。
尾花:世界最古の契約書は、メソポタミア文明まで遡ります。土地の売買や婚姻にまつわる契約内容が、粘土板に楔形文字で書かれていたそうです。その内容から取引関係にある双方のストーリーが見え、当時の社会情勢や人々の価値観もわかります。やはり契約書には大きな価値があるのです。
楔形文字が当時のイノベーションだったとしたら、現代のイノベーションはAIです。取引関係にある二社間のストーリーをAIが解釈できるようになると、契約書は経済活動のインフラとしての価値をより発揮できるようになるでしょう。そんな未来をつくっていきたいです。
藤田:弁護士になったばかりの頃「契約書では解釈の余地がある曖昧な表現を使わないように」と教えられます。つまり、契約書の文章はAIが解釈しやすい上に、人間にもわかりやすいはずなのです。ただ、いかんせん内容が面白くありません。今後は生成AIを用いることで、契約書の読解を抵抗なく行えるようになると良いですね。むしろ「契約書って面白い」と思ってもらえるくらいに、サービスを進化させていきたいと思います。