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営業利益3,000億円達成に向けた“稼ぐ”新規事業創出──AGC若月氏が語る「両利きの経営」の仕組み

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事業を“育て切る”組織の作り方

 AGCの「両利きの開発」を支えるのは、若月氏が率いる事業開拓部だ。一言でいえば、事業のシーズを育てて事業化するインキュベーション組織であり、若月氏はその役割を「つなぎ役」と表現する。

 カンパニーだけで新規事業を開発しようとすると、既存事業とのリソース配分などが課題となり、事業を“育て切る”ことができない。一方、研究を専門とする技術本部が独自に考案する新規事業は、マーケットニーズと乖離する傾向がある。

 そこで、事業開拓部が、カンパニーとの連携や外部との協創によって事業のシーズを集め、BTOL(ビジネス&テクノロジー アウトルック)を通してマーケットニーズや自社技術の調査・検討を行う。つまり、技術本部とカンパニー、さらにその先の顧客をつなぐ役割を担っているのだ。

 AGCの事業開拓部には、いくつか重要な特徴がある。一つ目として若月氏が強調したのは、既存のカンパニーや事業部から完全に独立し、経営陣直下のコーポレート組織であることだ。

 分離した組織として、各カンパニー・事業部を統合する。これにより、新規事業と既存事業の軋轢を解消できるだけでなく、迅速な意思決定が可能になって大企業の“擬似ベンチャー”のようなスピード感で事業化に邁進できるのだという。

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 また、事業開拓部の社員構成にもポイントがあると若月氏。AGCの事業開拓部は、新規事業専門の社員が一人もおらず、所属部署からの出向社員で成り立っており、全員がいずれは所属部署に戻る想定なのだ。

 しかもその出身部署は多岐にわたっているため、たとえば、自動車関連企業の顧客とコネクションを持つ営業社員が、化学品事業の技術を自動車業界に展開することもありうる。新規事業の開発において、「社員をどう配置するか」という課題に直面する企業は多いが、AGCの事業開拓部はその一つの解を提供しているといえる。

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 このような事業開拓部の取り組みもあり、AGCでは、多少時間がかかりながらも、ライフサイエンスやモビリティ、エレクトロニクスといった各分野の新規事業がカンパニーに移管されて成長を遂げた。現在では、全社の営業利益の約半分を新規事業が占めるまでになっているという。

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営業利益3,000億円達成に向けた事業選定のポイント

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この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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