SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

Biz/Zine Day 2025 June

営業利益3,000億円達成に向けた“稼ぐ”新規事業創出──AGC若月氏が語る「両利きの経営」の仕組み

  • Facebook
  • X
  • Pocket

営業利益3,000億円達成に向けた事業選定のポイント

 新規事業の開発では、“どのように”事業を展開するかだけでなく、“どのような”事業を展開するかも重要だ。若月氏はAGCにおける「新規事業に必須の三要素」として、将来性があるかという「マクロトレンド」、AGCならではの強みが発揮できるかという「適社性」、顧客ニーズとすり合わせているかという「お客様との強い握り」を挙げる。

 そして、この三つの前提を満たせた場合、新規事業のテーマの有望性を見極める段階に入る。主要な判断軸は、2030年のありたい姿として掲げる財務目標、営業利益3,000億円に寄与するかどうかだ。ここでは、売上ではなく利益を志向していることがポイントだという若月氏。たとえば、売上3兆円でROS(売上高経常利益率)10%というパターンと、売上が2兆円でROS15%というパターン、どちらも考えられるということになる。

クリックすると拡大します

 では、具体的にどのようなテーマを有望と判断するのか。AGCの基準は明確で、2035年時点のROCE(使用資本利益率)が20%以上で、かつNPV(正味現在価値)が100億円以上であることを条件としているという。現時点で条件を満たしておらず、将来的にも満たせない可能性が高いテーマは、AGCで取り組む価値がないと判断し、改廃あるいはExit(事業売却)の道をたどることになる。

 選定基準が明確な分、テーマの見極めは早い。しかし、逆にいえば、最後まで注力テーマとして残る新規事業のシーズは決して多くないということでもある。たとえば、カンパニーや技術本部から30件、案件の相談が寄せられたとすると、TAM(総獲得可能市場)の大きさやAGCの優位性などの初期的な議論を経て残るのが15件、そこからROCEやNPVの数値分析や競合との差別化要素など愚直な分析を経て残るのが13件、さらに具体的な事業仮説構築を経て残るのが6件で、その後中断せずに継続して取り組めるテーマは2件程度しかない計算だ。

クリックすると拡大します

新規事業向けの人財と文化を醸成

 AGCはこのような状況を受け、今後さらに新規事業の創出を加速していくために、人財や文化などの土壌作りにも取り組んでいる。

 若月氏によれば、新規事業には三タイプの人財が必要だという。つまり、周囲を巻き込みながら不確実なことへの挑戦を楽しめる「リーダー」タイプと、細かいことによく気が付いてリーダーを補完できる「サポーター」タイプ、シナリオ思考で冷静な判断ができる「目利き」タイプだ。それぞれ先天的な特性も相当あるが、会社としてもそれらの能力を伸ばしていけるように育成していきたいと若月氏は意気込む。

 そして、新規事業が生まれやすい文化を醸成するには、社内外の多様性に触れられる「環境」作りや、行動して見極めたり、数字で考えたりする「習慣」の定着が欠かせない。特に若月氏が強調するのは、チャレンジを推奨し、失敗を受け入れる「雰囲気」の浸透だ。

クリックすると拡大します

 「これまでの文化では、失敗を過大にマイナス評価するあまり、チャレンジに成功するだけでなく、そもそもチャレンジしないことまで加点対象となっていたが、今後は成功しても失敗しても、チャレンジしたこと自体をプラスに評価する文化にしていきたい」と若月氏。「笑顔とドヤ顔」という組織モットーのもと、挑戦をポジティブに捉える土壌作りに励むと述べ、セッションを締め括った。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
この記事の著者

山田 奈緒美(ヤマダ ナオミ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • Facebook
  • X
  • Pocket

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング