『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版』では、第1版で展開された知財マネジメントの「オープン&クローズ戦略」を、IoT/インダストリー4.0の文脈を踏まえて改めて解説。特に凋落してしまった日本の製造業がこれからどうしていくべきなのか、具体的な戦略が述べられています。
オープン&クローズ戦略とは、自社製品のコア技術は社外秘、つまりクローズにしておき、その周辺技術をオープンにしてパートナー企業に使ってもらうことでエコサイクルを構築する戦略です。技術力はいまだ世界最高基準にある日本企業の多くは、その技術力ではなく知財マネジメントの不足と失敗によって憂き目を見たのだというのが小川紘一氏の分析であり、そこを乗り越えていく方策がオープン&クローズ戦略なのです。
かつては日本企業の多くが知財マネジメントに乗り出し、特許の取得を進めました。ですが、特許は逆から見れば技術のすべてを公にしてしまうのに等しく、必ずしも有効な戦略ではありません。
AppleやQualcommの強みはまさしくオープン&クローズ戦略にあります。根幹の技術はクローズにし、自社のビジネスモデルの内側に外部企業を取り込んでしまい、そこで自社を中心にしたエコシステムを作り上げています。コア技術を独占し、ユーザーを囲い込むことで、外部企業はそのエコシステムの中でビジネスをしなければならなくなるわけです。それは、iPhoneとiOSという製品、そしてApp Storeというシステムを見れば一目瞭然でしょう。
また、アメリカのゼネラル・エレクトリック社が進めているインダストリアル・インターネット、ドイツのSAP社とシーメンス社が取り組むインダストリー4.0というIoTの標準化競争は、今後ますます激しくなると予想されます。誰がIoTのデファクト・スタンダードを握るのか、世界中が注目しています。
そこに日本企業が立ち入る隙はあるのでしょうか。小川氏は警鐘を鳴らします。いま、中国企業もドイツと協調関係を形成しています。ですが日本企業は、その競争に顔を出すことすらできていません。例えば世界に誇る日本の自動車産業が、欧米の規格に合わせて製造しなければならなったとしたら……。
本書では、特に第1版から加筆された補論において、IoT/インダストリー4.0の現状分析と、日本企業が取るべき戦略を解説しています。本書は標準規格に合わせてビジネスをするのではなく、みずからが標準規格になるための処方箋です。