インタビュー Biz/Zineプレス

CA藤田社長に買われ内定時から起業、スマホビジネスでチャレンジ中、シロク飯塚氏。

サイバーエージェントのグループ企業、(株)シロクの飯塚勇太社長。4年前に新卒からいきなり、グループ企業の社長に。順風満帆だった起業から一転、キャッシュフローが尽きかけて躓いて事業転換。藤田社長を頷かせた起死回生のビジネスモデルとは?

[公開日]

[著] BizZine編集部

[タグ] ベンチャー 事業開発

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内定からいきなり社長、1億の資金で起業

株式会社シロク 代表取締役社長/CEO 飯塚勇太氏

-- サイバーエージェントに内定してすぐ新会社として起業されたのが、4年前ですよね?

飯塚 そうですね。2011年、就職活動中に参加したサイバーエージェント(以下、CA)のインターンシップ中に知り合った仲間と意気投合してスマホのアプリを作ろうということになって、「My365」という写真共有アプリを作りました。制作は半年ぐらいかかり、11月にリリースしたら一週間で5万ダウンロード。学生だったのでプロモーションや広告など何もコストをかけていなかったのですが、想像以上にユーザーが使ってくれました。4人ともCAに内定していたのですが、藤田社長から会社化を勧められて、12月に会社を設立しました。

-- CAの中の事業部ではなく、いきなり起業するというのは具体的にはどういう感じだったんですか?

飯塚 私がプロデューサーで、もう一人がディレクター、あとエンジニアとデザイナーの4名。起業するにはちょうど良いメンバー構成でした。藤田社長に起業を勧められた時はうれしかったですね。その後は事業内容やお金のやりくりも自分たちで考えろとすべて任されました。CAが出してくれたのは、資本金と資本準備金をあわせて1億でした。

-- 新卒後すぐの起業でいきなり1億の出資というのは凄いですね。

飯塚 そうですね。ただその頃はビジネス経験もないので、具体的な事業計画もなくて、とにかくサービスを拡大させることだけを考えていました。まずはサービスを大きくすることに専念するようにというのが藤田社長からのアドバイスでした。

-- 2011年というとiPhoneアプリがかなりブームとはいえ、その頃すでにInstagramなど写真アプリはありましたよね。写真共有アプリの「My365」が支持された理由は何だったんでしょう。

飯塚 「My365」というのは、1日1枚しか写真を投稿できない写真共有アプリです。みんなで合宿に行った時に、「足湯」でアプリのブレストをしていた時にアイデアを思いつきました。足湯って面白いよねという話になって。日本人は、俳句もそうですが、制限の中で「趣き深さ」を感じるところがありますよね。子供の前に、箱を置いて絶対開けるなというと開けちゃいますよね。そういうミニマルな趣きとか制限をかけたもののへの関心というアプローチからアイデアが生まれました。写真共有アプリで1日1枚しか投稿できないために、気合が入った写真が投稿されます。そしてそれがカレンダーになって振り返ることができます。半年間で100万のダウンロード。最終的に500万ダウンロードという規模にまで成長しました。 ただ、「My365」は無料アプリで収益化は難しかった。そこで、アバターを作るアプリの「ピプル(pipulu)」というアバターアプリをリリースしました。CAが運営しいる「アメーバピグ」が人気だった背景があり、アバターサービスをアプリで提供すれば事業として成功するのでは考えました。

順風満帆から躓き、CA役員からの追求と事業転換

-- 自社の親会社の強みと連携するという戦略は、教科書的には成功しそうですよね。

飯塚 ところが、それが見事に失敗したんです。「My365」も停滞して、「ピプル」もすべってしまって、会社のキャッシュが底をつきそうになり、潰れそうになったのが、2年めの2013年です。CAの場合、投資した企業のお金がなくなると「投資委員会」という追加の出資の承認会議のようなものがあります。追加でお金をもらって広告費を一気に使って収益をあげるという提案をしたんですが、それは甘すぎると指摘を受けました。最終的に3000万円の追加出資をしてもらいました。3000万円だと、当時月々のキャッシュフローが月500万円だったので、このままだと6ヶ月で潰れてしまう。しかも3000万円でうまくいかなければ、これ以上増資も融資もできないという状況。役員の部屋に呼ばれて、厳しく追求される。私自身は内定者から社長になって、このように追い込まれるなんて想定していませんでした。

-- そこまで来ると給料とか、人員を整理するとかいう話にならなかったんですか?

飯塚  自分も含めて、正社員は6名。正直、人件費を削っても大して変わらない。その他の部分で徹底的にコストカットしていきました。大きかったのはサーバー代と家賃。それまではCAが入っていた渋谷のマークシティにいたのですが、近くの家賃が6分の1のビルに移転しました。引っ越しも業者を使わず自分たちで机とか運んで。そこから会社を維持するためにBtoC事業から、BtoBのサービスを起ちあげました。それが、「GrowthPush(グロース・プッシュ)」というものです。

-- スマホでBtoBのサービスだと大きな事業転換ですよね。

飯塚 「GrowthPush(グロース・プッシュ)」というのは、スマートフォンのプッシュ通知解析サービスです。スマホのアプリってプッシュ通知が来ますよね。その機能をそれぞれのアプリごとに作るのってけっこう面倒なんです。その機能をSDKとして提供するいうものです。プッシュ通知を受け取るユーザーの分析ができ、プッシュ通知を最適化するという機能ももっています。このサービスを作って藤田社長に話したら、今まで見たこと無いぐらい良い反応だったんです。そこで、CAに「あした会議」という役員対抗の事業立案コンテストがあるのですが、そこで「シロクを業態変更します」と宣言し、決議されました。

スマホアプリ成功の鍵は「分析」と「プッシュ通知」

-- 藤田社長が納得した理由は何だったんしょう?

飯塚 それまで、藤田から、「こっちに進め」という指示はありませんでした。新卒から社長になって迷っていた時、どこまで自分たちが決めて良くて、どこまでを親会社の許可が必要なのかを聞いたことがあります。印象に残っているのは、「なぜそんなことを聞くんだ、全部自分たちが決めて良いに決まっている」と、その時ばかりは強く言われたことです。BtoBへの転換も、藤田社長に相談する前に自分たちで意志決定しました。スマホアプリの開発に関して良くわかっているので、このビジネスは直感的にいけると思ってもらえたんじゃないでしょうか?

-- 現在、BtoBのスマートフォンアプリのビジネスの状況はいかがですか?

飯塚 スマートフォンアプリはすでに、成熟市場とも言えます。大きくなったアプリやサービスは、これ以上一挙にユーザーを増やすことは特に難しい。そうした中で、アプリダウンロード後のユーザーのサービス離れを防ぐための支援が重要になってきます。そして入ってきたユーザーの価値をどれだけあげられるか。既存顧客に対しての価値最大化の方が、新規獲得の数より重要になってくる。一人ひとりのアプリのユーザーに対して、最適なおもてなしやサポートをしないとユーザーがどんどん減っていく。いわゆるLTV(Life Time Value)をどれだけあげられるかに尽きる。こう考えるとアプリビジネスの成功の鍵として、「分析」と「プッシュ通知によるリテンション」が重要だと言えると思うんです。

僕自身は、会社を進化論のイメージでとらえています。ずっと同じことで生き残れることはない。昔だったらPCからインターネットの流れに乗るとか、スマートフォンの流れに乗るとか、「来た流れに乗ること」が重要だと思っています。今後もどんどん時代の流れに適応して、進化していく会社にしていきたいですね。

株式会社シロク 代表取締役社長/CEO 飯塚勇太氏

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