イノベーティブでありたければ過去を果断に切り捨てよ
三村:イノベーティブな組織文化を育むにあたり、今から起こせるアクションを教えてください。

髙橋:一人ひとりの中にある固定概念や成功体験を捨てることではないでしょうか。それがイノベーティブな組織文化のための第一歩だと思います。「過去の自分が否定されるんじゃないか」「誰かから反対されるんじゃないか」と思うと、第一歩を踏み出しにくくなりますよね。失敗の許容は経営の努力です。失敗できる企業の体力や環境をこちらが用意すれば、あとは一人ひとりが第一歩を踏み出すのみです。
三村:ありがとうございます。磯和さんはいかがですか?
磯和:私も髙橋さんと同意見で、過去を果断に切り捨てることが重要だと考えます。LLM登場前夜は「構造化されたデータが重要」と言われていました。情報を綺麗に整えてデータレイクに放り込むことが是とされていたわけです。ところが数ヵ月前にOpenAIがMCP(Model Context Protocol)を使い出したことで、AI同士がつながり始めました。
つまり、データベースの出力口にAIを実装すれば、別のAIから「こんな情報が欲しい」とリクエストするだけで綺麗なデータが得られるんです。ほんの一年前に是とされていたデータレイク作業は、もしかすると無駄になるかもしれません。これほどAIの進化は早いため、今正しいとされていることが半年後には間違いになることはどうしたって起こり得ます。
そんな折、つい我々は「せっかくここまでやったんだから」と思ってしまいがちです。ただ、そこで判断を間違えると永遠に非効率的なことをやり続けることになります。間違いは必ず発生しますが、それは判断ミスではなく世の中の変化によるものです。
三村:ゆくゆくはLLMもコモディティ化して、どのAIを使っても同じアウトプットが得られるようになるかもしれませんね。その場合、AIの上に乗せるアプリケーションが差別化のポイントになりそうです。
AIは未来をデザインする味方になる
三村:それでは最後に、お二人から参加者の皆さまへメッセージをお願いします。
磯和:私が就職した頃、時価総額の世界一位はNTTで、二位が住友銀行でした。世界で二番目の会社に入ったつもりが、どえらい30数年を送ることになりました。最後の社会人生活を賭けて、日本をもう一度豊かな社会にしようと本気で思っています。今のような変動期はもう一度浮上するチャンスですから、皆さんぜひ一緒に頑張りましょう。
髙橋:「過去と他者を変えられないが、未来と自分は変えられる」という言葉がありますよね。私もそのとおりだと思います。未来は自分でデザインしていけますし、AIはその味方になるはずです。これほど心強いことはありません。皆さんも私と一緒に頑張っていきましょう。
三村:本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。