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売り切り型から脱却!老舗メーカーのブラザー工業が挑むミシン事業の変革

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アプリは100万DL達成!顧客像がクリアに

──事業変革によって得られた成果やもたらされた影響について、定量/定性いずれの面からもお話しいただけますか?

秋田:アプリのリリースから約3年でダウンロード数は約100万に達しました。当初の想定を上回る数値です。

秋田:刺繍ミシンのお客様像がクリアになったことも、Artspiraがもたらした成果と言えます。これまでは小売店で当社の刺繍ミシンを購入されたお客様が、商品をどう使っているか詳しくはわかりませんでした。Artspiraでお客様と直接つながることにより、お客様がどんなものを見て、どんなデザインをダウンロードしているかがわかるようになりました。小売店経由で購入されるお客様の母数が最も多いため、主要なお客様の姿が見えるようになったことは大きいです。

──自社だけで事業変革を進める選択肢もあった中、電通デジタルが伴走したことによるメリットはありましたか?

秋田:高速でPDCAを回す経験がなかったため、デジタルの世界では当たり前に使われているスキルやノウハウ、考え方を一から教えていただけたことはありがたかったです。

 新たなチャレンジが求められる一方、ミシンというハードで売上を立てることも引き続きやっていかなければなりません。全てを変えるのではなく、今までの資産を残しながら新しい挑戦をスタートさせる必要があります。電通デジタルさんのお力を借りて、商品企画や開発に携わるメンバーのためのUX研修を開催したのですが、そこではスキルや知識だけでなく、変革に向かうマインドもレクチャーいただきました。

──事業変革を進めるにあたり、ブラザー工業と同じようなつまずきを感じる老舗企業は多いのでしょうか?

清水:多いと思います。「イノベーションや変革とはこうあるべきだ」と教科書的に言うことは誰でもできるんです。しかしながら、ブラザー工業様には長い歴史があります。これまでの歩みを大切にしながら「その上でイノベーションをこう起こすべきだ」というように、正しく“ブラザーナイズ”するのが我々の役割だと考えています。良き翻訳者・通訳者のようなイメージです。

クラフトのエコシステムを完成させたい

──最後に、秋田さんの展望をお聞かせください。

秋田:当社ではグループビジョンとして「At your side 2030」を掲げています。2030年度をイメージしながら全社そして各事業の方向性を明確化し、そこに向けて中期戦略を立てているのです。

 私達のチームでは、事業全体のDXを目指しています。その一歩がArtspiraです。Artspiraとその周辺のハード(ミシンやカッティングマシンなど)で、お客様に楽しんでいただけるエコシステムを2030年度に完成させる絵を描いています。

 当社はあくまでもメーカーです。DXを極めてテック企業になろうとしているわけではありません。今後も良い商品をつくりながら、そこにITをうまく融合させて、競合と差別化した収益性の高い事業を目指していきたいです。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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