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売り切り型から脱却!老舗メーカーのブラザー工業が挑むミシン事業の変革

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 「ヒト」「モノ」「カネ」と並んで「データ」が重要な経営資源となりつつある今、小売店を介した販売が中心だった老舗メーカーはビジネスモデルの変革を迫られている。家庭用ミシンを製造するブラザー工業も、同様の壁に直面していた。そこで同社は、ミシンとの連携が可能なアプリを開発し、顧客と深くつながるための仕組みを構築。LTV経営の実現に向けたDXを進めている。本記事では、一連の取り組みをリードするブラザー工業の秋田氏と、パートナーとして同社に伴走する電通デジタルの清水氏を取材。事業変革の詳細をうかがった。

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300万円超のミシンも販売

──まずは、ブラザー工業における家庭用ミシンの歴史について教えてください。

秋田:当社のルーツは、1908年に安井兼吉が開業したミシンの修理業にあります。1932年に、それまでは輸入品が中心だった家庭用ミシンを国産化し、国内販売を開始しました。

ブラザー工業 執行役員 秋田雅弘氏
ブラザー工業 執行役員 秋田雅弘氏

秋田:1962年に社名をブラザー工業とし、1970年代以降に電子ミシンなど当時の最新技術を取り入れた商品を製造するようになりました。刺繍ミシンの製造・販売を開始したのは1991年です。

 1995年に人気キャラクターの刺繍デザインを内蔵したキャラクターミシンを発売したところ、国内外で高い人気を博しました。「ブラザーの刺繍ミシン」が市場に広く浸透するきっかけとなった出来事です。現在販売している刺繍ミシンの価格帯は10万円台から300万円超まで幅広く、昨年発売したフラッグシップモデルにはプロジェクターやAIなど最新の技術を搭載しています。

【左】300万円超のモデル「AVENEER EV1」(C)Disney【右】100万円のモデル「Innovis VF1」
【左】300万円超のモデル「AVENEER EV1」©Disney【右】100万円のモデル「Innovis VF1」

──御社はプリンターや産業用機器など様々な製品を展開されていますが、家庭用ミシンの事業規模はどの程度になりますか?

秋田:2024年度の実績で申し上げると、ブラザーグループ連結売上において、家庭用ミシンを中心としたパーソナル・アンド・ホーム事業の売上は約7%を占めています。また、事業セグメント利益率は約13%です。特に刺繍ミシンは利益率が高く、当事業の利益に大きく貢献しています。

対象顧客を「クラフトを楽しむ人」に拡大

──家庭用ミシンの主戦場となるクラフト市場の現状と、それを踏まえた御社の課題を教えてください。

秋田:家庭用ミシンの市場規模は、年間700万台と推定されています。買い換え需要があり、高額商品の売れ行きは米国を中心に好調です。ただ、キルトや刺繍を楽しむお客様は先進国に多く、そもそもの人口が減っています。人口が増えつつある新興国では、ミシンの市場が先進国ほど大きくありません。

 このような市況を踏まえてビジネスを成長させるとなると、付加価値の高いサービスを提供して収益を上げる必要があります。そこで、当社は2022年にビジネスドメインを刷新しました。これまでは「家庭用ミシンを利用するお客様」がビジネスドメインでしたが「クラフトを楽しむ全てのお客様」に領域を広げて価値を提供することにしたのです。たとえば、イラストレーターやクリエイターなど、ミシンに触れる機会がなかった新たな顧客層を開拓しながら、ミシン以外のクラフト商品群を充実させる方針に舵を切りました。

──直近では、家庭用ミシンのビジネスモデル変革に注力されているとうかがいました。

秋田:1to1のデジタルマーケティングで行うことで、お客様のニーズにタイムリーにお応えするべく、ビジネスモデルの変革を進めています。小売店の店頭やECサイトで当社の刺繍ミシンを購入してくださるお客様が年間何十万人もいらっしゃるのに、そのお客様の好みや腕前がわかるデータは当社にありません。売り切り型のビジネスから脱却するため、2022年に「Artspira(アートスピラ)」というアプリを開発しました。

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コンテンツの充実を図ってデータという資産を蓄積する

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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